行政書士の田中さん

会社設立と創業融資はどちらが先?日本政策金融公庫への申込みから逆算した進め方

会社を設立して事業を始めたいものの、自己資金だけでは足りないため、創業融資を利用したいと考える方は少なくありません。

その際に迷いやすいのが、次の順番です。

会社を設立してから創業融資を申し込むのか
創業融資を受けられることを確認してから会社を設立するのか

先に会社を設立して融資を受けられなければ、予定していた事業を始められないかもしれません。一方、会社を設立する前では、法人名義による融資の申込みを進めにくくなります。

結論からいうと、法人として創業融資を受ける場合は、

「融資の準備を始める」
「会社の内容を決める」
「会社を設立する」
「法人として創業融資を申し込む」

という順番が基本です。

単純に会社設立だけを先に進めるのではなく、融資の見込みや必要資金を整理してから会社を設立することが重要です。

1.結論は「融資の準備が先、正式な申込みは会社設立後」

会社設立と創業融資の順番を考えるときは、「融資の準備」と「融資の正式な申込み」を分けて考える必要があります。

法人名義で創業融資を申し込む場合、借主となる会社が存在していなければなりません。そのため、正式な申込みは原則として会社設立後になります。

しかし、融資を受けられるか何も検討せずに、会社設立だけを先に終わらせるのもおすすめできません。

会社を設立する前に、少なくとも次の内容は整理しておきましょう。

  • 創業に必要な資金の総額
  • 自己資金として準備できる金額
  • 創業融資の希望額
  • 資金の具体的な使い道
  • 売上と経費の見込み
  • 毎月の返済可能額
  • 店舗や事務所の候補
  • 必要な設備と見積額
  • 許認可の有無と取得時期

これらを整理すると、「現在の計画で会社を設立してよいのか」「資金計画を見直すべきか」が見えてきます。

したがって、会社設立と創業融資を考える場合は、融資の準備を先に始め、その内容を会社設立に反映させることが大切です。

2.なぜ会社設立前に融資の準備が必要なのか

会社設立では、商号や本店所在地だけでなく、資本金、事業目的、役員、決算月などを決めます。

これらは単なる登記事項ではありません。創業融資や許認可、事業開始後の運営にも関係します。

例えば、創業に800万円必要であるにもかかわらず、必要資金を計算せずに資本金10万円で会社を設立した場合、「なぜこの資本金額にしたのか」「残りの資金をどのように準備するのか」を説明する必要があります。

また、定款の事業目的に融資を受けて始める事業が適切に記載されていなければ、設立後に目的変更が必要になる可能性もあります。

会社設立後に修正できる項目もありますが、変更登記などの追加手続きや費用が発生することがあります。

会社を作ってから資金計画を考えるのではなく、どのような事業を、いくらの資金で始めるのかを整理したうえで設立内容を決めましょう。

3.法人で創業融資を受ける場合の基本的な流れ

会社設立と創業融資は、次の順番で進めると整理しやすくなります。

段階

主な準備内容

1.事業計画の整理

商品・サービス、顧客、販売方法、売上の根拠を考える

2.必要資金の計算

設備資金と運転資金を分け、総額を確認する

3.資料の収集

物件資料、設備の見積書、受注見込みなどを集める

4.会社の設計

資本金、本店所在地、事業目的、役員などを決める

5.会社設立

定款作成や設立登記を行う

6.融資申込み

法人の情報と創業計画をそろえて申し込む

7.審査・面談

必要資金、経験、売上予測などを説明する

8.融資実行

融資金の入金後、設備購入などを進める

日本政策金融公庫の創業計画書でも、必要資金、調達方法、事業の見通しなどを整理する必要があります。したがって、設立手続きと創業計画書の作成を別々に進めるのではなく、同じ計画として組み立てることが重要です。

関連記事:日本政策金融公庫の創業融資の申込方法。必要書類から融資実行までの流れ

4.会社設立前に決めたい5つのポイント

4-1.資本金

資本金は1円から設定できますが、設立できる金額と、事業を継続できる金額は別問題です。

資本金を決めるときは、次の金額を確認します。

  • 会社設立にかかる費用
  • 店舗や事務所の初期費用
  • 設備・車両・パソコンなどの購入費
  • 仕入資金
  • 人件費や外注費
  • 広告費
  • 売上が安定するまでの運転資金

なお、創業融資を資本金の払込みに使うことはできません。資本金は会社設立前に発起人や社員が払い込むものであり、会社設立後に受ける融資とは分けて考える必要があります。

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、創業に必要な設備資金や運転資金を対象としています。

関連記事:日本政策金融公庫の創業融資で自己資金が少ない場合の対策

4-2.本店所在地

本店所在地は登記だけでなく、事業の実態や許認可にも関係します。

自宅やバーチャルオフィスでも法人登記はできますが、業種によっては独立した事務所や一定の設備が必要です。賃貸物件の場合は、法人登記や事業利用が認められているかも確認しましょう。

融資申込みの後に本店所在地や営業場所が変更になると、事業計画や必要資金の説明も変わる可能性があります。

4-3.事業目的

定款の事業目的には、設立後に実際に行う事業を具体的に記載します。

将来行う可能性がある事業を加えることもできますが、関係の薄い事業を大量に並べると、会社が何をするのか分かりにくくなります。

許認可が必要な事業では、目的の表現が許可申請に適しているかを設立前に確認することが重要です。

4-4.会社の設立日

会社設立日は、希望した日に必ず設立準備が完了するとは限りません。

開業日、物件の引渡日、許認可の申請時期、融資申込みの時期などから逆算して決めましょう。

「この日を設立日にしたい」という希望だけで決めると、融資実行前に家賃や人件費などの支払いが始まることがあります。

4-5.株式会社か合同会社か

株式会社と合同会社のどちらでも創業融資を申し込むことはできます。

融資を受けやすくするためだけに株式会社を選ぶのではなく、取引先からの見え方、設立費用、将来の事業展開、出資者との関係などを踏まえて決めましょう。

関連記事:株式会社と合同会社。起業家がまず知っておきたい7つの違い

 

5.店舗物件は会社設立や融資より先に契約してよいのか

飲食店、美容室、小売店、介護事業などでは、店舗や事務所が決まらなければ、家賃や内装費を正確に計算できません。

一方、融資結果が出る前に賃貸借契約を結ぶと、融資を受けられなかった場合でも、保証金、仲介手数料、家賃などの負担が残る可能性があります。

そこで、物件を扱う不動産会社や貸主に、次のような対応が可能か相談します。

  • 一定期間の仮押さえ
  • 入居申込書や出店申込書の提出
  • 契約開始日の調整
  • 融資承認を条件とする契約
  • 融資が不成立の場合の解除条件
  • 設立後の法人を借主とする契約への切替え

ただし、「仮契約」という名称だから自由に解除できるとは限りません。

どのような条件で契約が成立し、支払った金銭が返還されるのかは、契約書の内容によって決まります。「融資を受けられなければ自動的に白紙になる」と思い込まず、解除条件や返金条件を確認しましょう。

貸主が融資に関する条件を認めない場合もあります。融資結果が出るまで物件を確保できない可能性も含め、物件契約と融資申込みの時期を調整する必要があります。

6.業種によって適切な順番は変わる

店舗を必要としない事業

Web制作、コンサルティング、システム開発など、比較的少ない設備で始められる事業では、事業計画と必要資金を整理した後、会社設立を進めやすいでしょう。

ただし、取引先や受注見込み、売上の計算根拠は、設立前から準備しておく必要があります。

店舗や高額設備を必要とする事業

飲食店、美容室、運送業、製造業などでは、物件、内装工事、車両、機械などの金額によって必要資金が大きく変わります。

会社設立前に候補物件を探し、設備の見積書を取得したうえで、資金計画を作ることが重要です。

ただし、融資実行前に解約できない契約や高額な発注を行うことには注意が必要です。

許認可が必要な事業

運送業、介護事業、飲食店などでは、許認可の要件を満たさなければ事業を始められません。

事業目的、営業所、設備、資格者などの要件を確認せずに会社を設立すると、融資を受けても許可を取得できない可能性があります。

このような業種では、会社設立、創業融資、許認可を一つのスケジュールとして考える必要があります。

7.会社設立と創業融資で避けたい失敗

資金計画を作らずに会社を設立する

会社を作ることが目的になり、設立後に「開業資金が足りない」と気付くケースがあります。

会社設立前に、設備資金だけでなく、売上が安定するまでの運転資金も計算しましょう。

自己資金を使いすぎる

融資申込み前に、内装工事や設備購入などで自己資金を使いすぎると、手元資金が少なくなります。

先に支払う必要があるものと、融資実行後に支払えるものを分けておきましょう。先に支払った場合は、領収書、請求書、振込記録を保管します。

融資結果が出る前に高額な契約をする

融資を予定していることと、融資が決定していることは異なります。

物件、設備、車両などを契約する場合は、キャンセル条件や支払時期を必ず確認しましょう。

設立内容と創業計画が一致していない

定款ではWeb制作会社となっているのに、融資申込みでは飲食店の計画を提出するなど、設立内容と事業計画が一致しなければ説明が難しくなります。

会社設立と創業融資は、同じ事業計画に基づいて進めることが重要です。

8.会社設立前から創業融資を見据えたスケジュールを作る

創業融資では、申込み後すぐに資金が入金されるとは限りません。

書類の不足、事業計画の修正、追加資料の提出などによって、予定より時間がかかることもあります。

そのため、希望する開業日から逆算し、次の期間を確保しておきましょう。

  • 事業計画と必要資金を整理する期間
  • 見積書や物件資料を集める期間
  • 定款作成や設立登記に必要な期間
  • 創業融資の申込み準備期間
  • 審査や面談に対応する期間
  • 融資実行後に設備を整える期間
  • 許認可を取得する期間

急いで会社を設立するよりも、融資、物件、許認可を含めて全体の順番を決めることが、結果的に開業の遅れを防ぎます。

関連記事:日本政策金融公庫の審査の流れと審査期間

9.会社設立と創業融資に関するよくある質問

会社設立前に創業融資の相談はできますか

会社設立前でも、事業計画、必要資金、自己資金、設立予定の会社内容などを整理することはできます。

むしろ、定款や資本金を決定する前に融資を見据えた計画を作ることで、設立後の修正を減らしやすくなります。

創業融資を資本金にできますか

創業融資を会社設立時の資本金の払込みに使うことはできません。

資本金は会社設立前に準備し、創業融資は設立後の設備資金や運転資金として考えましょう。

個人で融資を申し込み、後から法人化できますか

個人事業として融資を受けた後に法人化すること自体はありますが、個人の借入れが自動的に法人の借入れへ変わるわけではありません。

最初から法人で事業を行う予定であれば、法人設立後に法人名義で申し込む方が、借主と事業主体の関係を整理しやすくなります。

会社を設立すれば創業融資を受けやすくなりますか

会社を設立しただけで審査に有利になるわけではありません。

創業者の経験、自己資金、必要資金の内訳、売上の根拠、返済可能性などを総合的に説明する必要があります。

10.まとめ

法人として創業融資を受ける場合、正式な申込みは会社設立後に行うのが基本です。

ただし、会社設立を先に済ませてから融資について考えるのではありません。

おすすめする順番は次のとおりです。

1.事業内容と必要資金を整理する
2.自己資金と借入希望額を決める
3.物件資料や見積書を集める
4.融資を見据えて資本金や事業目的を決める
5.会社を設立する
6.法人として創業融資を申し込む

つまり、「会社設立が先か、創業融資が先か」ではなく、「融資の準備をしたうえで会社を設立し、その後に正式な申込みをする」というように同時進行で行くべきと考えます。

11.会社設立と創業融資をまとめて相談したい方へ

会社設立と創業融資を別々に進めると、資本金、事業目的、本店所在地、物件契約、許認可などが、後から融資計画と合わなくなることがあります。

当事務所では、会社を作る手続きだけでなく、創業に必要な資金や融資申込みの時期も確認しながら、設立から創業融資までの順番を整理しています。

  • 資本金をいくらにすればよいか分からない
  • 会社設立前に物件を契約してよいか不安
  • 融資申込みに間に合う設立日を決めたい
  • 事業目的や許認可も含めて相談したい
  • 会社設立と創業計画書の作成を一緒に進めたい

このようなお悩みがある方は、会社を設立してしまう前にご相談ください。

現在の自己資金、希望する開業日、必要な設備などを確認し、会社設立から融資申込みまでの現実的なスケジュールをご提案します。

※融資の可否は金融機関の審査によって決定されるため、融資の実行を保証するものではありません。

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