人材紹介会社の設立を考えるとき、「事務所とパソコンがあれば、小さな資金で始められる」と考える方もいるかもしれません。
しかし、有料職業紹介事業には許可の資産要件があり、開業後も、求職者の集客から採用・入社、紹介手数料の入金まで時間がかかります。
創業融資を検討する際は、許可を取得できる資金の準備と、売上が入るまで事業を続けられる運転資金を、あわせて考えることが大切です。
この記事では、人材紹介業の開業・会社設立に向けた資金計画と、創業計画書で押さえたいポイントを解説します。
1.人材紹介業の開業は「許可」と「資金計画」をセットで考える
人材紹介業は、求人企業と求職者を結びつけ、雇用関係の成立をあっせんする事業です。自社で雇用した労働者を派遣する人材派遣業とは、事業の仕組みが異なります。
有料職業紹介事業を始めるには、厚生労働大臣の許可が必要です。会社を設立するだけで営業を始められるわけではありません。
会社設立前に、少なくとも次の点を押さえておきましょう。
- 許可の資産要件を満たせるか
- 職業紹介責任者の要件を満たす人を確保できるか
- 事務所や個人情報の管理体制が許可基準に対応しているか
- 定款の事業目的に有料職業紹介事業を含めているか
事務所契約や会社設立を先に進めると、後から変更が必要になる場合があります。設立・許可・融資の準備を、一つの開業スケジュールとして組み立てることが重要です。
有料職業紹介事業の許可申請は、社会保険労務士が担当する分野です。当事務所では、会社設立の準備や創業融資の資金計画を支援し、許可申請については提携社会保険労務士と連携して進めます。
2.許可の資産要件は、借入だけでは満たせない
有料職業紹介事業の新規許可では、事業所が1か所の場合、財産的基礎として次の両方が必要です。
項目 | 主な要件 |
基準資産額 | 500万円以上 |
自己名義の現金・預貯金 | 150万円以上 |
基準資産額は、資産から繰延資産・営業権を除き、負債を差し引いて計算します。複数の事業所を設ける場合は、必要額が増えます。
ここで注意したいのは、「500万円借りれば許可を取れる」という意味ではないことです。
借入をすると現預金が増える一方、同額の負債も増えます。そのため、借入だけでは基準資産額の不足を解消できません。
また、資本金500万円で設立しても、設立後の支出や損失によって、申請時に必要な基準資産額を下回る可能性があります。登記された資本金の額と、許可審査で確認される資産の額を区別して考えましょう。
なお、現預金150万円は基準資産額500万円に加算する別枠の金額ではありません。両方の条件を満たす必要がある、という意味です。
3.人材紹介業の創業融資は、運転資金の見積りが重要
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方などを対象に、設備資金と運転資金を取り扱う制度です。人材紹介業でも、事業内容や資金使途などの審査を受けて利用を検討できます。
資金計画では、次のような支出を検討します。
支出の種類 | 主な内容 |
開業時の支出 | 事務所契約、内装、パソコン、什器、ホームページ制作など |
継続する支出 | 人件費、家賃、通信費、広告費、求人・求職者管理システム利用料など |
集客にかかる支出 | 求職者向け広告、候補者データベースの利用料、求人企業への営業費用など |
個々の費用が融資対象になるかは、契約内容や支払時期、資金使途によって確認が必要です。見積書や料金表を用意し、金額の根拠を説明できるようにしましょう。
成功報酬型の人材紹介では、面談や推薦を行っても、入社に至らなければ紹介手数料が発生しない契約が一般的です。採用決定から入社までの期間や、入社後の支払条件も考慮する必要があります。
たとえば、毎月の支出が60万円で、最初の入金まで4か月かかる計画なら、その間の支出は240万円です。これは計算例ですが、入金がさらに遅れた場合にも資金が不足しないか確認しておきましょう。
4.創業計画書では「求人企業」と「求職者」の両方を考える
人材紹介業では、求人企業だけを確保しても、紹介できる求職者がいなければ売上につながりません。求職者を集めても、条件に合う求人がなければ成約は難しくなります。
創業計画書では、両方の獲得方法と、採用につなげる仕組みを具体的に示しましょう。
得意な業界・職種を明確にする
「幅広い人材を紹介する」という計画だけでは、自社が選ばれる理由が伝わりにくくなります。
たとえば、ITエンジニア、介護職、営業職など、経験や人脈を生かせる分野を設定します。そのうえで、次の内容を明確にします。
- その分野を選ぶ理由
- 創業者の営業・採用・紹介業務の経験
- 求人企業や求職者との接点
- 大手紹介会社と比較した自社の強み
なお、職種によっては有料職業紹介で取り扱えない業務もあるため、対象分野は許可上の取扱範囲も確認して決めることが必要です。
求人企業への営業方法を示す
開業後に連絡できる企業、採用需要を確認している企業、営業先候補をまとめましょう。
単に「知人の会社がある」と書くよりも、募集職種、採用予定人数、取引に向けた協議状況まで示す方が、計画の具体性が高まります。商談段階の企業と、契約済みの企業は区別して記載しましょう。
求職者の集客費用を見積もる
SNS、広告、候補者データベース、既存の人脈など、集客方法ごとの費用と見込人数を見積ます。
登録人数だけでなく、面談できる人数、求人条件に合う人数、推薦・採用につながる人数まで考えることが大切です。
5.売上予測は「紹介手数料×入社人数」で組み立てる
成功報酬型の場合、売上予測の基本は次の式です。
売上見込額=1人当たりの紹介手数料×入社人数
ただし、「月に2人紹介できるはず」と述べるだけでは、根拠が不十分です。
求人件数、候補者の面談数、推薦数、採用・入社に至る割合を整理し、月別の入社人数につなげます。過去の経験に基づく数字と、開業後の仮定は分けて説明しましょう。
たとえば、紹介手数料を1人90万円、月2人の入社と仮定すると、売上見込額は180万円です。しかし、開業直後から毎月同じ人数が入社するとは限りません。
通常の計画に加え、「入社人数が半分」「入金が1か月遅れる」といった場合も計算しておくと、必要な借入額と返済の余裕を判断しやすくなります。
6.早期退職による返金も資金繰りに織り込む
人材紹介業では、紹介した人が短期間で退職した場合、契約上の返戻金制度に基づいて紹介手数料の一部を返金することがあります。
返金の有無、対象となる退職理由、期間、割合は、設定する制度・契約によって異なります。一定の割合を一律に返すものではありません。
資金計画では、入金された紹介手数料をすぐに全額使う前提にせず、返金が発生しても支払いを続けられる余裕を持たせましょう。
また、求人条件の確認、求職者への説明、入社後のフォローを計画に含めることで、早期退職を減らすための取組も示せます。
7.融資申込み前に、数字を裏付ける資料を準備する
創業計画書に加えて、人材紹介業では次のような資料をまとめておくと、事業の内容を説明しやすくなります。
- 創業者の職歴・担当業務・実績をまとめた資料
- 営業先候補と商談状況の一覧
- 紹介手数料、入金条件、返戻金制度の案
- 広告やシステム利用料などの見積書
- 月別の売上・支出・預金残高を示す資金繰り表
- 許可取得に向けた準備状況と開業スケジュール
許可と融資には、それぞれ別の審査があります。許可前に融資の準備を進める場合は、許可証の提出が必要となる時期や融資実行の条件を確認し、開業日から逆算して進めましょう。
人材紹介会社の設立・創業融資をご検討の方へ
人材紹介業の創業では、許可の資産要件を満たすための準備と、紹介手数料が入るまでの運転資金を、あわせて設計する必要があります。
「会社設立時にいくら出資すればよいか分からない」
「広告費や人件費を含め、借入額をどう決めればよいか」
「紹介実績や人脈を創業計画書にどう反映すればよいか」
当事務所では、人材紹介業の会社設立と創業融資に向けた資金計画、創業計画書の作成、申込準備をサポートしています。
有料職業紹介事業の許可申請は提携社会保険労務士が担当し、当事務所と連携して、設立・許可・融資のスケジュールを調整します。
「資本金をいくらにするか」「開業後の運転資金をどの程度確保するか」など、準備段階からお気軽にご相談ください。会社を設立してから資金不足に気づくことがないよう、準備段階からご相談ください。
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