創業融資を申し込む際には、必要な資金を「設備資金」と「運転資金」に分けて考えます。
しかし、初めて融資を申し込む方にとっては、
「店舗の内装工事費はどちらに入るのか」
「家賃や人件費は何か月分まで計算すればよいのか」
「パソコンやホームページ制作費は設備資金になるのか」
など、分かりにくい点も多いのではないでしょうか。
創業融資では、希望する金額だけでなく、「何に、いくら使うのか」を具体的に説明することが重要です。
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資を検討している方に向けて、設備資金と運転資金の違い、必要額の考え方、申込時の注意点を分かりやすく解説します。
1.設備資金とは
設備資金とは、事業を始めるために必要となる設備や備品、工事などに使う資金です。
一般的には、一度購入すると長期間使用するものが設備資金に該当します。
主な例は次のとおりです。
・店舗や事務所の内装工事費
・厨房機器や製造機械
・営業用車両
・パソコンや複合機
・机、椅子、棚などの備品
・看板やレジ設備
・店舗や事務所の敷金、保証金
例えば、飲食店であれば、内装工事費、厨房機器、冷蔵庫、テーブル、椅子などが設備資金になります。
事務所を開設する場合には、パソコン、複合機、デスク、電話設備などが該当します。
2.運転資金とは
運転資金とは、事業を始めた後、営業を続けるために必要となる資金です。
開業しても、すぐに十分な売上が入るとは限りません。
売上が発生してから実際に入金されるまで、1か月以上かかる事業もあります。その間にも、家賃や給与、仕入代金などの支払いは発生します。
主な運転資金の例は次のとおりです。
・店舗や事務所の家賃
・従業員の給与
・仕入代金や材料費
・広告宣伝費
・外注費
・水道光熱費
・通信費
・消耗品費
・リース料
事業を開業するための資金が設備資金、開業後に事業を続けるための資金が運転資金と考えると分かりやすいでしょう。
3.設備資金と運転資金の違い
両者の違いを簡単にまとめると、次のようになります。
区分 | 内容 | 主な例 |
設備資金 | 長期間使用する設備や備品、工事に使う資金 | 内装工事、機械、車両、パソコン、厨房機器 |
運転資金 | 事業を続けるための日常的な支払いに使う資金 | 家賃、人件費、仕入代金、広告費、外注費 |
判断に迷う場合は、
・長期間使用するものは設備資金
・繰り返し支払うものは運転資金
という基準で考えると整理しやすくなります。
ただし、契約内容や支払方法によって扱いが異なる場合もあります。
4.設備資金には見積書が必要
日本政策金融公庫へ設備資金を申し込む場合、原則として見積書など、金額の根拠が分かる資料を用意します。
例えば、次のような資料です。
・内装工事の見積書
・機械や厨房設備の見積書
・車両の見積書
・パソコンや備品の見積書
・賃貸借契約書
・敷金や保証金の明細
設備資金として300万円を申し込むのであれば、その300万円を何に使うのか説明できなければなりません。
見積書には、購入先、商品名、数量、単価、合計金額などを記載してもらいましょう。
また、創業計画書に記載する設備資金の金額と、見積書の合計額が一致していることも重要です。
5.運転資金は毎月の支出から計算する
運転資金は、「念のため200万円」と大まかに決めるのではなく、毎月の支出を積み上げて計算します。
例えば、開業後の毎月の支出が次のようになるとします。
支出項目 | 1か月の金額 |
家賃 | 15万円 |
人件費 | 25万円 |
仕入代金 | 20万円 |
広告費 | 5万円 |
水道光熱費・通信費など | 5万円 |
合計 | 70万円 |
3か月分の運転資金を用意する場合は、
70万円×3か月=210万円
となります。
ただし、必ず3か月分でなければならないという決まりはありません。
必要な期間は、次のような事情によって異なります。
・売上が発生するまでの期間
・売上が入金されるまでの期間
・毎月の固定費
・仕入れから販売までの期間
・手元に残る自己資金
大切なのは、なぜその金額が必要なのかを説明できることです。
6.売上と入金のタイミングに注意する
運転資金を計算するときは、売上が発生する時期だけでなく、実際に入金される時期も考える必要があります。
例えば、4月に100万円の売上があっても、入金が5月末であれば、4月中の家賃、給与、仕入代金は手元資金から支払わなければなりません。
特に、法人向けの事業や建設業、システム開発業などは、売上から入金までに時間がかかることがあります。
この入金と支払いの時間差を考えずに資金計画を立てると、売上は出ているのに現金が不足する可能性があります。
7.設備資金だけで自己資金を使い切らない
創業時には、店舗の工事や機械の購入など、目に見える設備にお金をかけたくなります。
しかし、設備代金に自己資金をほとんど使ってしまうと、開業後の家賃や仕入代金を支払う資金が残りません。
例えば、自己資金が500万円あり、設備に450万円を使うと、残る資金は50万円です。
毎月の支出が70万円であれば、開業後すぐに資金不足となる可能性があります。
創業時には、設備をそろえることだけでなく、開業後に事業を続けられるだけの運転資金を残すことが重要です。
8.運転資金は多すぎても少なすぎてもよくない
運転資金を少なく見積もりすぎると、売上が安定する前に資金不足になるおそれがあります。
一方で、必要な理由を説明できないほど大きな金額を申請すると、融資担当者から根拠を確認されます。
例えば、毎月の支出が30万円であるにもかかわらず、運転資金として500万円を希望する場合には、なぜその金額が必要なのか説明しなければなりません。
融資希望額は、毎月の支出、売上の入金時期、手元資金などから現実的に計算しましょう。
9.融資申込前に設備を購入するときの注意
創業準備を急ぎ、融資を申し込む前に設備を購入してしまう方もいます。
しかし、すでに支払いが終わっている設備は、今後必要となる資金ではないため、融資の対象として認められない場合があります。
高額な設備を購入する場合は、できるだけ融資の申込時期と支払時期を事前に確認しましょう。
やむを得ず先に支払う場合には、次の資料を保管しておく必要があります。
・見積書
・注文書
・契約書
・請求書
・領収書
・振込記録
ただし、資料があれば必ず融資対象になるとは限らないため注意が必要です。
10.創業計画書との整合性が重要
創業融資では、設備資金と運転資金だけでなく、創業計画書全体のつながりも確認されます。
例えば、従業員を2人雇う計画なのに、運転資金に人件費が入っていなければ、計画に矛盾が生じます。
また、飲食店を開業するのに、厨房設備や食材の仕入費用が計上されていなければ、実現可能性を疑われる可能性があります。
次の内容が一致しているか確認しましょう。
・事業内容
・必要な設備
・従業員数
・売上計画
・経費計画
・設備資金
・運転資金
・自己資金
・融資希望額
創業計画書は、各項目を別々に記入するのではなく、事業全体の数字をつなげて作成することが大切です。
11.創業融資でよくある失敗
創業融資の資金計画では、次のような失敗がよくあります。
設備資金しか計算していない
内装工事や機械の金額だけを計算し、開業後の家賃や人件費を考えていないケースです。
運転資金を「諸経費」とまとめている
運転資金200万円などと一括して記載すると、使い道が分かりません。
家賃、人件費、仕入代金などに分けて説明しましょう。
見積書と創業計画書の金額が違う
設備の内容を変更した場合は、見積書だけでなく創業計画書の数字も修正する必要があります。
開業直後から売上が順調に上がる前提になっている
実際には、開業後すぐに計画どおりの売上が上がらないこともあります。
一定の余裕を持った運転資金を計算しておきましょう。
12.融資希望額の考え方
融資希望額は、次の考え方で計算します。
必要な設備資金+必要な運転資金-事業に使える自己資金=融資希望額の目安
例えば、次のような場合です。
項目 | 金額 |
設備資金 | 400万円 |
運転資金 | 200万円 |
必要な資金の合計 | 600万円 |
項目 | 金額 |
自己資金 | 200万円 |
融資希望額 | 400万円 |
この場合、設備資金については見積書、運転資金については毎月の支出から、400万円が必要な理由を説明します。
ただし、計算した金額がそのまま融資されるとは限りません。
実際の融資額は、自己資金、事業経験、売上計画、返済可能性などを含めて審査されます。
13.まとめ
創業融資における設備資金とは、内装工事、機械、車両、パソコンなど、長期間使用するものに必要な資金です。
運転資金とは、家賃、人件費、仕入代金、広告費など、開業後に事業を続けるための資金です。
日本政策金融公庫へ創業融資を申し込む際には、次の点を確認しましょう。
・設備資金と運転資金を分ける
・設備資金の見積書を用意する
・運転資金は毎月の支出から計算する
・売上から入金までの期間を考える
・設備購入後に残る手元資金を確認する
・創業計画書と見積書の金額を一致させる
・事業計画全体の数字に矛盾がないか確認する
創業融資では、できるだけ多く借りることよりも、必要な金額を根拠とともに説明することが重要です。
設備をそろえるだけでなく、開業後も事業を継続できる資金計画を作りましょう。
創業融資の資金計画でお悩みの方へ
「設備資金と運転資金の分け方が分からない」
「運転資金を何か月分用意すればよいか迷っている」
「日本政策金融公庫へいくら申し込むべきか判断できない」
「創業計画書の数字に矛盾がないか確認してほしい」
このようなお悩みはありませんか。
当事務所では、会社設立や個人事業の開業を予定している方を対象に、日本政策金融公庫へ提出する創業計画書などの作成をサポートしています。
事業内容や開業予定をお伺いし、設備資金と運転資金の整理、必要額の計算、売上計画や経費計画との整合性を確認します。
創業融資は、設備を購入した後や資金が不足してからではなく、開業準備の早い段階で検討することが大切です。
日本政策金融公庫への創業融資をご検討中の方は、お問い合わせフォームからご相談ください。
