創業時には、店舗の保証金、内装工事費、設備購入費、広告費、仕入資金など、売上が立つ前から多くの資金が必要になります。
そのため、自己資金だけでなく、日本政策金融公庫の創業融資を検討する方も少なくありません。
ただし、創業融資を受けるには、事業内容や資金計画を説明するための書類を準備する必要があります。書類が不足していたり、内容があいまいだったりすると、審査がスムーズに進まないこともあります。
この記事では、日本政策金融公庫の創業融資を申し込む際に必要となる主な書類と、準備するときの注意点をわかりやすく解説します。
1.創業融資で準備する主な書類
日本政策金融公庫の創業融資では、申込内容や事業形態によって必要書類が変わります。
たとえば、個人事業主として申し込むのか、株式会社や合同会社などの法人として申し込むのか、すでに開業しているのか、これから開業するのかによって、準備する書類は異なります。
主な書類は、次のとおりです。
書類 | 主な内容 |
創業計画書 | 事業内容、創業の動機、資金計画、売上見込みなどを記載 |
見積書 | 内装工事、設備、備品などの金額を確認 |
本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
履歴事項全部証明書 | 法人で申し込む場合に必要 |
許認可証・届出書類 | 許認可が必要な業種の場合 |
通帳の写し | 自己資金や資金の流れを確認 |
賃貸借契約書・物件資料 | 店舗や事務所を借りる場合 |
確定申告書・決算書 | すでに事業を開始している場合 |
この中でも特に重要なのが、創業計画書です。
創業計画書を中心に、見積書、通帳、物件資料などをそろえることで、事業内容や資金計画を説明しやすくなります。
2.創業計画書は審査の中心になる書類
創業計画書は、日本政策金融公庫の創業融資で最も重要な書類です。
創業計画書には、主に次のような内容を記載します。
- 創業の動機
- 経営者の経歴
- 取扱商品・サービス
- 取引先・販売先
- 必要な資金と調達方法
- 売上や利益の見込み
公庫の担当者は、この創業計画書をもとに、「どのような事業なのか」「本当に売上が見込めるのか」「借入後に返済できるのか」を確認します。
たとえば、飲食店であれば、「カフェを開業する」というだけでは不十分です。
どのエリアで、誰をターゲットにして、どのようなメニューを提供するのか。客単価、席数、来店人数、営業日数なども整理しておく必要があります。
売上見込みについても、単に「月商100万円を目指す」と書くだけでは、根拠が弱くなります。
ごく簡単に例えば、
客単価1,200円 × 1日30人 × 月25日営業 = 月商90万円
というように、数字の根拠を示すことが大切です。
創業計画書は、事業への準備度を伝えるための書類です。希望だけでなく、現実的な数字と具体的な計画を記載しましょう。
3.見積書は資金使途を説明するために必要
設備資金を申し込む場合には、見積書が重要になります。
設備資金とは、内装工事、厨房機器、機械、車両、パソコン、什器、備品など、事業に必要な設備を購入・導入するための資金です。
創業計画書に「内装工事費300万円」「厨房設備150万円」と記載する場合、その金額の根拠となる見積書を準備しておく必要があります。
見積書があることで、融資希望額の使い道が明確になります。
反対に、見積書がなく概算だけで記載していると、「本当にその金額が必要なのか」が伝わりにくくなります。
特に店舗ビジネスでは、開業前に大きな設備資金がかかることが多いため、早めに業者から見積書を取得しておくと安心です。
また、創業計画書に書いた金額と見積書の金額にズレがあると、説明が必要になります。資金計画を作る前に、見積書を確認しておきましょう。
4.通帳の写しで自己資金の準備状況を確認される
創業融資では、自己資金も重要な審査ポイントです。
自己資金とは、創業者自身が事業のために準備してきた資金のことです。公庫では、通帳の写しなどを通じて、自己資金の金額や資金の流れを確認することがあります。
特に見られやすいのは、自己資金をどのように準備してきたかです。
毎月の給与から少しずつ貯めてきた資金であれば、計画的に創業準備をしてきたことを説明しやすくなります。
一方で、申込直前に大きな入金がある場合は、その資金の出所を説明する必要があります。家族からの支援、退職金、資産売却など、内容によって説明の仕方が変わります。
また、すでに開業準備のために使ったお金がある場合は、領収書や振込記録を保管しておきましょう。
物件の申込金、備品購入費、ホームページ制作費、広告費など、事業のために支払った費用は、創業準備の一部として説明できる場合があります。
5.法人で申し込む場合は履歴事項全部証明書を準備する
株式会社や合同会社を設立してから申し込む場合には、履歴事項全部証明書を準備します。
履歴事項全部証明書には、会社名、本店所在地、事業目的、資本金、役員、設立日などが記載されています。
公庫はこの書類によって、申込者である法人の基本情報を確認します。
会社設立前に融資の相談を進めることはできますが、法人として正式に申し込む場合には、登記完了後の書類が必要になります。
そのため、会社設立と創業融資を同時に進める場合は、スケジュールに注意が必要です。
また、創業計画書に書く事業内容と、会社の事業目的が大きくずれていないかも確認しておきましょう。
たとえば、飲食店を開業するのに、会社の目的に飲食店営業に関する内容がまったく入っていないと、説明が必要になることがあります。
会社設立前から創業融資を検討している場合は、定款や登記の事業目的も、融資申込を意識して整えておくことが大切です。
6.許認可が必要な業種は許可証や届出書類も確認する
事業内容によっては、許認可や届出が必要になります。
たとえば、次のような業種です。
- 飲食店
- 美容室
- 古物商
- 建設業
- 運送業
- 宅地建物取引業
- 酒類販売業
このような業種では、許可証や届出書類の提出を求められることがあります。
すでに許可を取得している場合は、許可証の写しを準備しておきましょう。
まだ取得前の場合は、どの許認可が必要なのか、いつ申請する予定なのか、開業予定日までに取得できる見込みがあるのかを説明できるようにしておくことが大切です。
たとえば、飲食店の場合は、保健所の営業許可が関係します。物件の設備が許可要件を満たしているかも確認しておく必要があります。
融資の準備と許認可の準備は、別々ではなく、同時に進めることが重要です。
7.店舗や事務所を借りる場合は物件資料も準備する
店舗や事務所を借りて開業する場合は、物件に関する資料も準備しておきましょう。
たとえば、次のような資料です。
- 賃貸借契約書
- 物件概要書
- 重要事項説明書
- 家賃や保証金がわかる資料
- 店舗や事務所の図面
公庫の審査では、毎月の固定費も確認されます。
特に店舗ビジネスでは、家賃の負担が大きくなりやすいため、売上計画とのバランスが重要です。
売上見込みに対して家賃が高すぎると、資金繰りに不安があると見られる可能性があります。
また、物件資料があると、開業場所の具体性を説明しやすくなります。
駅からの距離、周辺の人通り、近隣の競合、ターゲット層との相性なども整理しておくと、創業計画書の内容に説得力が出ます。
8.すでに開業している場合は確定申告書や売上資料を準備する
すでに事業を始めている場合は、創業計画書だけでなく、確定申告書や決算書が必要になることがあります。
個人事業主であれば、確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書などが関係します。
法人であれば、決算書、法人税申告書、試算表などを求められることがあります。
まだ決算や確定申告を迎えていない場合でも、月別の売上表、売上台帳、請求書、レジデータなどを整理しておくとよいでしょう。
開業後に申し込む場合は、「これまでの実績」と「今後の見通し」の両方が見られます。
売上がまだ少ない場合でも、今後どのように売上を伸ばすのかを説明できるようにしておくことが大切です。
9.必要書類を準備するときの注意点
創業融資の書類を準備するときは、書類同士の内容にズレがないように注意しましょう。
たとえば、創業計画書には「内装工事費300万円」と書いているのに、見積書では500万円になっている場合、資金計画の整合性が弱くなります。
また、自己資金の金額についても、創業計画書と通帳の内容が合っているか確認が必要です。
売上計画については、数字の根拠を用意しておきましょう。
「なんとなくこれくらい売れると思う」という計画ではなく、客単価、客数、営業日数、契約見込み、広告計画などをもとに説明できるようにすることが大切です。
さらに、創業計画書の内容は、面談で自分の言葉で説明できるようにしておく必要があります。
専門家に作成を依頼した場合でも、最終的には創業者本人が事業内容や数字の意味を理解していることが重要です。
10.まとめ:必要書類は事業計画を伝えるための資料
日本政策金融公庫の創業融資では、創業計画書、見積書、本人確認書類、履歴事項全部証明書、許認可証、通帳の写し、物件資料、確定申告書や決算書など、申込内容に応じた書類を準備します。
中でも重要なのは、創業計画書です。
創業計画書は、事業内容、資金使途、売上見込み、返済計画を説明する中心資料です。
そして、見積書、通帳、物件資料、許認可関係書類などは、創業計画書の内容を裏付ける資料になります。
創業融資の準備では、「書類をそろえること」だけでなく、「その書類で何を説明するのか」を意識することが大切です。
書類の内容を整理し、数字の根拠を確認しておくことで、面談時にも落ち着いて説明しやすくなります。
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