会社を設立するときに、最初に悩む項目のひとつが「商号」です。
商号とは、簡単にいうと会社の名前のことです。株式会社であれば「株式会社〇〇」、合同会社であれば「合同会社〇〇」というように、定款や履歴事項全部証明書(登記簿謄本)に記載される正式な会社名になります。
商号は、名刺、ホームページ、請求書、契約書、銀行口座、許認可申請など、会社設立後のさまざまな場面で使う大切な名称です。
そのため、単に「かっこいい名前」「好きな名前」で決めるだけでなく、法律上のルール、事業内容との相性、覚えやすさ、将来の展開まで考えて決めることが大切です。
この記事では、会社設立時に商号を決める際の基本ルールと、実務上の注意点について解説します。
1.商号とは会社の正式名称のこと
商号とは、会社が事業活動を行ううえで使用する正式な名称です。
たとえば、次のようなものが商号です。
- 株式会社〇〇
- 〇〇株式会社
- 合同会社〇〇
- 〇〇合同会社
会社を設立する場合、商号は定款に必ず記載します。そして、設立登記が完了すると、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)にも記載されます。
つまり商号は、会社の「看板」であり、社会的な信用にも関わる重要な項目です。
特に、これから取引先を増やしたい方、融資を受けたい方、許認可を取得したい方にとっては、相手に伝わりやすく、信頼感のある商号にすることが大切です。
2.商号には「株式会社」「合同会社」などの会社形態を入れる
会社の商号には、会社の種類を表す文字を入れる必要があります。
株式会社であれば「株式会社」、合同会社であれば「合同会社」という文字を商号の中に入れます。
たとえば、株式会社の場合は、
- 株式会社〇〇
- 〇〇株式会社
のどちらでも構いません。
一方、合同会社の場合も、
- 合同会社〇〇
- 〇〇合同会社
のようにすることができます。
会社形態をどこに入れるかは、事業の雰囲気やホームページでの見え方も考えて決めるとよいでしょう。
3.商号に使える文字を確認する(ここは特に大切です。)
商号には、漢字、ひらがな、カタカナのほか、ローマ字やアラビア数字を使うことができます。
たとえば、次のような商号も考えられます。
- 株式会社東京トウキョウ
- 株式会社NextTotal
- 合同会社みらいミライ
- 株式会社ABC987
また、商号には一定の符号を使うこともできます。
具体的には、「&」「’」「,」「-」「.」「・」などの符号です。
ただし、符号を使う場合には注意が必要です。
符号は、商号の先頭や末尾に自由に使えるわけではなく、基本的には文字を区切るために使うものです。たとえば「株式会社A・B・C」のように、文字と文字の間で使用する形が一般的です。
また、ローマ字や数字を使った商号を考える場合は、登記上は全角で表記される点にも注意が必要です。
たとえば、普段の表記では「ABC」「Next Step」のように半角英字で考えていたとしても、登記簿上は「ABC」「Next Step」のように全角で表記されます。
実務上、定款認証の段階で半角・全角について細かく指摘されないこともありますが、定款の商号と登記される商号の同一性を重視する観点から、英字や数字を含む商号は、最初から全角で表記しておくと安心です。
特に、定款、登記申請書、印鑑届書、設立後の銀行口座開設書類などで商号の表記が微妙に違うと、確認に時間がかかる可能性があります。
そのため、英字や数字を使う場合は、
- 定款では「株式会社ABC987」
- 登記申請書でも「株式会社ABC987」
- 印鑑届書でも「株式会社ABC987」
というように、表記を統一しておくことが大切です。
さらに、商号ではスペースの使用にも注意が必要です。
商号が登記される際は、ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合を除き、語句を区切るためにスペースを使うことはできません。
たとえば、ローマ字の複数単語を表す場合には、
- 株式会社TOKYO AMERICA
- 合同会社BLUE PIG
のようにスペースを使える場合があります。
一方で、日本語の語句を区切るために、
- 株式会社東京 トウキョウ
- 合同会社みらい ミライ
のようなスペースを入れることは、原則としてできません。
そのため、商号を考えるときは、「見た目として読みやすいか」だけでなく、「登記上その表記が使えるか」も確認する必要があります。
なお、記号やローマ字、数字を多く使いすぎると、名刺、請求書、契約書、銀行口座、ホームページなどで入力しづらくなることがあります。
会社名は、設立後に何度も使うものです。
登記できるかどうかだけでなく、取引先に伝えやすいか、検索しやすいか、書類に記載しやすいかという実務上の使いやすさも考えて決めるとよいでしょう。
4.同じ住所に同じ商号の会社は登記できない
商号を決めるときに、必ず確認しておきたいのが「同一商号・同一本店」のルールです。
会社の登記では、既に登記されている会社と「商号」と「本店の所在場所」が同じ場合、その商号で登記することはできません。これは商業登記法第27条に基づくルールです。
たとえば、同じ住所にすでに「株式会社○○○○」がある場合、同じ住所で新たに「株式会社○○○○」を設立することはできません。
ただし、同じ商号の会社が全国に一切存在してはいけない、という意味ではありません。
法務局の案内でも、既存の会社と商号および本店の所在場所が同一でなければ、直ちにその制限を受けるわけではないとされています。
とはいえ、近隣に似た名前の会社がある場合や、同じ業種で似た商号を使う場合には、トラブル防止の観点から注意が必要です。
5.有名企業やブランドに似た商号はよく考えて
法律上、同一商号・同一本店に該当しなければ登記できます。
しかし、登記できることと、安心して使い続けられることは別問題です。
たとえば、有名企業や有名ブランドに似た商号を使うと、商標権、不正競争防止法、取引先からの誤認などの問題が生じる可能性があります。
特に、次のような商号は注意が必要です。
- 有名企業と似すぎている名称
- 有名サービス名と紛らわしい名称
- 同じ業種の競合会社と似ている名称
- すでに商標登録されている名称
- 取引先や顧客が誤解しやすい名称
会社設立時には登記だけを意識しがちですが、将来ホームページや広告を出すことも考えると、商標やブランド面の確認も重要です。
6.事業内容が伝わりやすい商号にする
商号は、事業内容がある程度伝わる名前にすると、営業上のメリットがあります。
たとえば、建設業、飲食業、IT、コンサルティング、介護、運送業など、事業内容がある程度わかる商号にすると、初めて見る人にも会社のイメージが伝わりやすくなります。
たとえば、
- 株式会社〇〇建設
- 株式会社〇〇フードサービス
- 合同会社〇〇デザイン
- 株式会社〇〇コンサルティング
のような商号です。
一方で、事業内容を絞り込みすぎると、将来別の事業を始めたときに違和感が出ることもあります。
たとえば、最初は飲食店だけを行う予定でも、将来は食品販売、EC、フランチャイズ展開、コンサルティングなどに広げる可能性があるかもしれません。
その場合、商号をあまり限定しすぎると、後から事業内容と合わなくなることがあります。
商号を決めるときは、現在の事業だけでなく、将来の展開も少し考えておくとよいでしょう。
7.読みやすく、覚えやすい商号にする
商号は、読みやすさも大切です。
どれだけ意味のある名前でも、相手が読めない、覚えられない、検索しにくい名前だと、営業上は不利になることがあります。
特に注意したいのは、次のような商号です。
- 読み方がわかりにくい
- 長すぎる
- 英語や造語が難しすぎる
- 似たような名前が多い
- 口頭で伝えにくい
- 検索したときに他社が多く出てくる
会社名は、電話で伝えることもあります。
「会社名を教えてください」と聞かれたときに、何度も説明しないと伝わらない商号だと、実務上少し不便です。
また、ホームページやSNSで集客する場合は、検索しやすい商号かどうかも大切です。
商号を決める前に、一度Google検索をして、同じ名前や似た名前の会社が多くないか確認しておくとよいでしょう。
8.ドメインやSNSアカウントも確認する
これから会社を設立する場合、ホームページやSNSを活用する方も多いと思います。
そのため、商号を決める前に、希望するドメインやSNSアカウントが取得できるか確認しておくことも大切です。
たとえば、会社名は決まったものの、
- 希望するドメインがすでに使われている
- InstagramやXのアカウント名が取れない
- 同名のサービスが検索上位に出てくる
- 似た名前の会社が多く、検索で埋もれてしまう
ということがあります。
会社設立後に商号を変更することもできますが、定款変更、変更登記、銀行口座、契約書、ホームページ、名刺などの修正が必要になるため、手間と費用がかかります。
最初の段階で、商号、ドメイン、SNS、検索結果をまとめて確認しておくと、後々の変更リスクを減らすことができます。
9.商号を決めるときのチェックポイント
商号を決めるときは、次のポイントを確認しておくと安心です。
- 会社形態である「株式会社」「合同会社」が入っているか
- 登記で使える文字か
- 同じ住所に同じ商号の会社がないか
- 有名企業や有名ブランドに似すぎていないか
- 商標の問題がないか
- 事業内容と合っているか
- 将来の事業展開にも対応できるか
- 読みやすく、覚えやすいか
- 口頭で伝えやすいか
- 検索したときに紛らわしい会社が多くないか
- ドメインやSNSアカウントが取得できるか
- 融資や許認可の場面で不自然な印象を与えないか
商号は、会社設立の最初に決める項目ですが、その後長く使い続けるものです。
勢いだけで決めず、実務上の使いやすさも含めて検討することが大切です。
まとめ:商号は会社の第一印象を決める大切な名前
商号は、会社の正式名称であり、会社の第一印象を決める大切な要素です。
会社設立時には、登記できるかどうかだけでなく、事業内容との相性、覚えやすさ、検索のしやすさ、将来の展開、融資や許認可での見え方まで考えて決めることが重要です。
商号は後から変更することもできますが、変更登記や各種手続きが必要になり、手間もかかります。
そのため、会社設立前の段階でしっかり検討しておくことをおすすめします。
会社設立では、商号のほかにも、本店所在地、事業目的、資本金、役員構成、決算月など、最初に決めるべき項目が多くあります。
「この商号で問題ないか不安」
「事業目的や資本金も含めて相談したい」
「会社設立後の融資や許認可まで見据えて決めたい」
という方は、会社設立の準備段階から当事務所に相談することで、設立後の手続きをスムーズに進めやすくなります。
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