行政書士の田中さん

日本政策金融公庫の創業融資で自己資金が少ない場合の対策。審査に向けた7つの準備

日本政策金融公庫の創業融資を検討しているものの、「自己資金が少なくても申し込めるのか」「自己資金はいくら必要なのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

自己資金は創業融資の審査で確認される重要な項目ですが、金額だけで融資の可否が決まるわけではありません。

創業融資を受けるには、自己資金だけでなく、創業計画全体がしっかりしていることが重要です。また、公庫が融資した創業企業の調査では、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均2割程度とされていますが、この割合は融資を受けるための合格基準ではありません。

この記事では、日本政策金融公庫の創業融資で自己資金が少ない場合に、どのような対策を取ればよいのかを解説します。

1.日本政策金融公庫の創業融資では自己資金はいくら必要か

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度です。

現在の制度概要には、申込者全員に共通する「創業資金の何割以上」という自己資金要件は記載されていません。ただし、適正な事業計画を作成し、その計画を実行する能力があると認められることが利用条件となっています。

したがって、自己資金が少ないという理由だけで、申し込みができなくなるわけではありません。
しかしながら自己資金を貯めずに起業を考えている人に第三者が融資をするかどうかは一考するべきではないでしょうか。

また、自己資金が少ないほど借入金への依存度が高くなり、創業後の返済負担も大きくなります。そのため、審査では次のような点を含めて総合的に確認されます。

  • 自己資金をどのように準備したか
  • 必要資金と借入希望額に無理がないか
  • 売上予測に具体的な根拠があるか
  • 創業する事業の経験や能力があるか
  • 創業後も返済を続けられるか

自己資金の金額だけではなく、事業計画全体から「準備をしてきたこと」と「返済できること」を示す必要があります。

2.自己資金が少ない場合に確認されるポイント

自己資金と創業資金全体のバランス

自己資金が100万円でも、創業に必要な資金が300万円の場合と1,000万円の場合では、その意味が異なります。

必要資金が300万円であれば、借入れなどで調達する金額は200万円です。一方、必要資金が1,000万円であれば、900万円を調達しなければなりません。

そのため、自己資金の金額だけでなく、創業資金全体に占める割合や借入依存度も重要です。

自己資金を準備してきた過程

創業融資では、現在の預金残高だけでなく、その資金をどのように準備したのかも確認されます。

毎月の給与から継続的に貯蓄してきたことが通帳などで分かれば、計画的に創業準備を進めてきたことを説明しやすくなります。

反対に、申込直前に多額の入金がある場合は、その資金の出所や入金理由を説明できる資料が必要です。

創業後の返済可能性

融資は借りた後に返済しなければなりません。

自己資金が少ない場合は、売上から経費を差し引いた利益で、毎月の返済を続けられることを数字で示す必要があります。

売上予測は、客単価、顧客数、契約件数、稼働日数などに分けて計算し、根拠を説明できるようにしましょう。

3.自己資金が少ない場合に行いたい7つの対策

3-1.創業に必要な資金を見直す

最初に行いたいのは、創業に本当に必要な資金を確認することです。

例えば、店舗や事務所の内装費、機械、車両、パソコン、広告費、人件費、保証金などが過大になっていないかを見直します。

設備を新品から中古品に変更する、事務所を小さくする、雇用や外注の開始時期を遅らせるなどの方法で、必要資金を抑えられることがあります。

ただし、必要な経費まで計画から外すと、創業後に資金不足となる可能性があります。事業を継続できる範囲で見直すことが大切です。

3-2.創業時期を調整して貯蓄する

開業時期を調整できる場合は、数か月から1年程度、自己資金を積み増す方法があります。

毎月一定額を継続して貯蓄すれば、自己資金が増えるだけでなく、計画的に創業準備を進めてきたことも伝わります。

短期間に無理をして貯めるのではなく、収入と生活費の範囲内で準備しましょう。

3-3.自己資金の出所を説明できるようにする

自己資金として説明する預金は、入金の経緯が分かるようにしておきます。

給与から貯めた場合は給与の入金履歴、保有資産を売却した場合は売買に関する資料などを整理します。

すでに創業のために設備や備品を購入している場合は、領収書、請求書、振込記録などを保管しておきましょう。創業準備のために支出したことを示す資料として役立つ可能性があります。

3-4.家族からの援助は内容を明確にする

家族から資金援助を受ける場合は、返済不要の援助なのか、返済が必要な借入金なのかを明確にします。

家族から一時的に借りたお金を、自己資金のように見せることは避けなければなりません。

返済が必要な場合は創業後の負担にも影響するため、誰から、いつ、どのような条件で受け取ったのかを正確に説明しましょう。

3-5.事業経験や受注見込みを具体的に示す

自己資金が少ない場合は、事業を実行できる根拠をほかの項目で補うことが重要です。

同じ業種での勤務経験がある場合は、勤務年数だけでなく、担当した仕事や実績を整理します。

見込み客や取引予定先がある場合は、次のような資料が事業計画の裏付けになります。

  • 見積依頼や問い合わせの記録
  • 取引予定先とのメール
  • 契約書や発注書
  • 予約状況や見込み客の一覧
  • 商品やサービスの資料

「顧客は確保できると思う」と説明するのではなく、誰に、どのような方法で販売するのかを示しましょう。

3-6.売上予測と返済計画を現実的にする

創業計画書には、創業当初と事業が軌道に乗った後の売上や経費を記載します。

売上は、次のように計算根拠を分解すると説明しやすくなります。

  • 店舗型事業:客単価×1日当たりの客数×営業日数
  • 建設・制作業:平均受注単価×月間受注件数
  • 継続契約型事業:月額契約単価×契約社数
  • 訪問型事業:1件当たり単価×訪問件数×稼働日数

売上だけでなく、仕入、人件費、家賃、外注費、広告費なども漏れなく計上します。

公庫の申し込みでは創業計画書が必要となり、面談では資金の使い道や事業計画が確認されます。事業計画に関する資料や、資産・負債が分かる書類も準備しておきましょう。

3-7.公庫以外の資金調達方法も検討する

自己資金と公庫からの借入れだけでは不足する場合は、自治体の制度融資などを含めて検討する方法があります。

ただし、借入先を増やせば返済負担も増えます。また、補助金や助成金は支出後に支給されるものが多く、創業時の支払いに使えない場合があります。

資金の入金時期と支払時期まで確認して、無理のない資金計画を立てましょう。

4.自己資金が少ないときに避けたい行動

申込直前に借りた資金で預金残高を増やす

一時的に借りたお金を自分の貯金のように見せることは、適切な方法ではありません。

資金の出所について説明が一致しなければ、創業計画全体の信用に影響する可能性があります。

必要資金を根拠なく少なくする

融資希望額を抑えるために、必要な運転資金や設備費を計画から外すと、創業後に資金が足りなくなるおそれがあります。

特に、売上が予定より遅れた場合に備え、事業が安定するまでの運転資金を考えておくことが大切です。

売上予測を大きくして返済可能に見せる

自己資金の少なさを補うために、根拠のない売上を計上しても、審査では計算根拠を確認されます。

業界経験、商圏、価格、見込み客、受注状況などに基づいて売上を計算しましょう。

準備が整わないまま申し込む

創業場所、見積書、必要な許認可、販売方法、自己資金の出所などが整理されていない状態で申し込むと、説明が不十分になる可能性があります。

資金を急ぐ場合でも、最低限の準備を整えてから申し込みましょう。

5.日本政策金融公庫へ申し込む前の確認リスト

  • 設備資金と運転資金を分けて計算している
  • 借入希望額の内訳を説明できる
  • 設備資金の見積書を取得している
  • 自己資金の出所と蓄積過程を説明できる
  • 事業経験や能力を整理している
  • 売上を単価や件数に分けて計算している
  • 売上予測を裏付ける資料がある
  • 既存の借入金や毎月の返済額を把握している
  • 創業後の生活費も考慮している
  • 必要な許認可と取得時期を確認している

不足している項目がある場合は、申し込み前に補う方法を検討しましょう。

6.よくある質問

自己資金がゼロでも申し込めますか

現在の制度概要には、申込者全員に共通する一律の自己資金割合は記載されていません。

ただし、自己資金がゼロの場合は、創業資金を借入れに依存することになり、返済負担も大きくなります。

「自己資金がゼロでも必ず利用できる」という意味ではないため、必要資金の縮小、創業時期の見直し、売上根拠の補強などが必要です。

自己資金は2割あれば十分ですか

公庫の調査では、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均2割程度とされています。しかし、これは融資を受けるための合格基準ではありません。

必要な自己資金は、事業内容、必要資金、経験、収支計画、既存の借入状況などによって異なります。

家族から受け取ったお金は自己資金になりますか

家族からの資金は、返済する必要があるのか、どのような経緯で受け取ったのかを明確にする必要があります。

返済が必要な場合は実質的には借入金です。自己資金のように見せず、事実に沿って資金計画に反映させましょう。

会社の資本金を増やせば審査に有利になりますか

資本金の額だけで融資の可否が決まるわけではありません。

資本金の原資、会社設立後の支出、預金残高、必要資金、売上予測などを含めて説明できることが重要です。

また、日本政策金融公庫の融資を会社設立時の資本金の払い込みに使用することはできません。法人として申し込む場合は、設立登記後の法人が融資の対象になります。

7.まとめ

日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金は重要な審査項目ですが、金額だけで融資の可否が決まるわけではありません。

自己資金が少ない場合は、必要資金の見直し、自己資金の出所、事業経験、売上の根拠、資金の使い道、返済計画を一つにつなげて説明することが重要です。

自己資金が少ないことを隠すのではなく、「なぜ現在の金額なのか」「なぜこの借入額が必要なのか」「創業後にどのように返済するのか」を、資料と数字を使って説明できるようにしましょう。

8.日本政策金融公庫の創業融資を検討している方へ

自己資金が少ない場合の創業融資では、創業計画書の空欄を埋めるだけでは十分ではありません。

当事務所では、日本政策金融公庫の創業融資を検討している方に向けて、事業内容の整理、創業計画書の作成、必要書類の準備をサポートしています。

会社を設立して申し込む場合には、会社設立の時期や手続き、事業に必要な許認可も含めて整理できます。

「自己資金が少なく、いくら申し込めるのか分からない」

「売上予測の根拠をどのように示せばよいか分からない」

「会社設立と融資申込みの順番を相談したい」

このようなお悩みがある方は、準備が不十分なまま申し込む前に、当事務所へお気軽にご相談ください。

現在の状況を確認し、ご自身の事業に合った創業計画と申込みまでの進め方を一緒に整理いたします。

※融資の可否は日本政策金融公庫の審査によって決定されるため、融資の実行を保証するものではありません。

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