行政書士の田中さん

建設業で独立開業するなら創業融資をどう活用する?必要資金・事業計画書のポイントを解説

建設現場で経験を積み、「自分で仕事を請け負いたい」「取引先から独立を勧められた」と考えている方もいるでしょう。

建設業は、事務所を借りずに一人で始められるケースがある一方、車両や工具の購入費、材料費、外注費など、開業時からまとまった資金が必要になりやすい業種です。

また、工事を終えてから代金が入金されるまでに時間がかかることもあります。売上があっても手元の資金が不足すると、次の現場に必要な材料費や外注費を支払えないおそれがあります。

そのため、建設業の開業では、設備をそろえる資金だけでなく、入金までの支払いを支える運転資金も準備することが大切です。

この記事では、建設業で独立開業する方に向けて、創業時に必要となる資金、利用を検討できる創業融資、事業計画書を作成する際のポイントを解説します。

1.建設業の開業に創業融資が役立つ理由

建設業では、仕事を受注できても、すぐに売上代金が入金されるとは限りません。

例えば、工事代金の入金が工事完了後や翌月末になる場合でも、材料費、外注費、従業員の給与、車両費などは先に支払わなければならないことがあります。

主な支出と入金の流れは、次のようになります。

  1. 工事を受注する
  2. 材料を購入し、職人や協力業者を手配する
  3. 工事を完成させる
  4. 元請会社などへ請求する
  5. 一定期間後に工事代金が入金される

工事が増えるほど、材料費や外注費の先払いも増える可能性があります。受注が好調であるにもかかわらず、資金繰りが厳しくなることも珍しくありません。

創業融資を利用して一定の運転資金を確保しておけば、入金を待つ間の支払いに対応しやすくなります。

2.建設業の開業に必要となる主な資金

必要な資金は、内装工事、電気工事、管工事、塗装工事など、始める工事の種類によって異なります。

創業計画書を作成する際は、必要資金を「設備資金」と「運転資金」に分けて整理しましょう。

設備資金

設備資金とは、事業で長期間使用する設備などを購入するための資金です。

建設業では、主に次のようなものが該当します。

  • 工事用車両や営業車両
  • 電動工具、測定器具、作業機械
  • パソコン、プリンター、電話
  • 事務所や資材置場の保証金
  • 事務所の備品

車両や高額な機械を購入する場合は、見積書を取得しておきます。中古品を購入する場合も、販売店の見積書などによって金額と購入先を説明できるようにしましょう。

運転資金

運転資金とは、開業後の事業を継続するために必要な資金です。

例えば、次のような支出が考えられます。

  • 材料や消耗品の仕入代金
  • 外注費
  • 従業員の給与
  • 事務所や資材置場の賃料
  • 車両の燃料代、駐車場代
  • 通信費、保険料
  • 広告宣伝費
  • ヘルメット、作業服、安全設備

特に注意したいのが、材料費と外注費です。

これらを先に支払い、工事代金が数か月後に入金される場合は、その間を自己資金だけで乗り切れるか確認しなければなりません。

単に「運転資金○○万円」とするのではなく、支払時期と入金時期を月ごとに整理すると、必要額を説明しやすくなります。

3.建設業の開業で検討できる主な創業融資

日本政策金融公庫の創業融資

代表的な制度が、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。

新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方などが対象となり、設備資金と運転資金に利用できます。

2026年9月時点では、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内とされています。ただし、実際の融資額や返済期間は、申込者の経験、自己資金、事業計画、返済能力などを踏まえて審査されます。

制度上の限度額まで借りられるという意味ではないため、自社に必要な金額を根拠とともに計算することが重要です。

自治体の制度融資

都道府県や市区町村では、信用保証協会や金融機関と連携した創業者向けの制度融資を設けていることがあります。

制度によっては、自治体が利息や信用保証料の一部を負担してくれる場合があります。一方、自治体、金融機関、信用保証協会による確認が必要となり、融資実行まで一定の時間がかかることもあります。

利用できる制度や条件は地域によって異なるため、開業予定地の自治体に確認が必要です。

4.建設業の創業計画書で重視されるポイント

これまでの経験を具体的に書く

建設業の創業融資では、これまでの実務経験が大切な判断材料になります。

「建設会社に10年間勤務した」という説明だけでなく、次の内容まで具体的に整理しましょう。

  • 経験した工事の種類
  • 現場で担当した業務
  • 現場管理や見積作成の経験
  • 保有する資格
  • 元請会社や協力業者との関係
  • 独立後に受注する予定の工事
  • 従業員や外注先を管理した経験

過去に担当した工事の実績表、資格証、勤務経験を確認できる資料などがあれば、経験の裏付けになります。

受注先と営業方法を明確にする

建設業では、技術力があっても、仕事を継続して受注できなければ売上は安定しません。

創業計画書には、次のような内容を記載します。

  • 元勤務先や既存の取引先から受注する
  • 元請会社から継続的に工事を受注する
  • 不動産会社や工務店へ営業する
  • 同業者から応援工事を受注する
  • ホームページや紹介によって顧客を獲得する

すでに受注予定がある場合は、工事の発注書、見積依頼書、基本契約書などを準備すると、売上予測の根拠を示しやすくなります。

ただし、特定の取引先だけに売上の大部分を依存する計画では、その取引がなくなった場合の影響も考える必要があります。将来的に取引先を増やす方針も説明しましょう。

売上予測を工事単価と件数に分ける

売上は、希望する金額ではなく、具体的な計算によって予測します。

例えば、内装工事業であれば、次のように計算できます。

平均工事単価40万円×月3件=月間売上120万円

人工で受注する場合は、次のような計算も考えられます。

1日当たりの単価2万5,000円×稼働日数20日=月間売上50万円

実際には、材料費、外注費、移動日、見積作成日、天候による中止なども考慮しなければなりません。毎月同じ件数を受注できる前提にせず、開業直後は控えめな計画にすることも必要です。

利益だけでなく入金時期を確認する

創業計画書上で利益が出ていても、資金繰りが安全とは限りません。

例えば、100万円の工事を受注して利益が見込めても、材料費30万円と外注費30万円を先に支払い、売上の入金が2か月後であれば、一時的に60万円以上の資金が必要になります。

そのため、次の項目を月別に整理しましょう。

  • 工事の受注時期
  • 材料費・外注費の支払時期
  • 工事の完成時期
  • 請求時期
  • 売上代金の入金時期
  • 給与や固定費の支払時期
  • 借入金の返済額

複数の工事が重なる場合は、必要な立替資金も大きくなります。利益計画と資金繰り計画は分けて確認することが重要です。

5.建設業許可が必要か確認する

建設業を始める場合は、請け負う工事の内容や金額によって、建設業許可が必要になることがあります。

原則として建設工事を請け負うには許可が必要ですが、建築一式工事では1件1,500万円未満など、建築一式工事以外では1件500万円未満の「軽微な建設工事」のみを請け負う場合、必ずしも許可は必要ありません。金額には消費税が含まれます。

ただし、許可が不要な規模から始める場合でも、元請会社から許可の取得を求められるケースがあります。将来的に500万円以上の工事を受注する予定があるなら、開業前から許可取得の要件を確認しておくことが大切です。

なお、創業融資を受けたからといって、建設業許可も取得できるものではありません。融資と建設業許可は別の制度であり、それぞれの要件を満たす必要があります。

6.創業融資を申し込む前に準備したい資料

一般的な提出書類に加えて、建設業では次のような資料を準備すると、計画を説明しやすくなります。

  • 創業計画書
  • 月別収支計画書、資金繰り表
  • 車両、工具、機械などの見積書
  • 受注予定工事の見積書や発注書
  • 元請会社との契約書
  • 資格証や講習修了証
  • 過去の工事実績をまとめた資料
  • 自己資金を確認できる預金通帳
  • 事務所や資材置場の賃貸借契約書
  • 建設業許可証または許可申請の準備資料

日本政策金融公庫へインターネットで申し込む場合、これから事業を開始する方や、開始して間もない方には創業計画書などの提出が案内されています。法人の場合は、履歴事項全部証明書や定款などが必要になります。

7.創業融資で避けたい計画

次のような計画は、融資審査で説明が難しくなりやすいため注意が必要です。

  • 必要資金の金額に見積書などの根拠がない
  • 売上が「知人から仕事をもらえる予定」という説明だけになっている
  • 開業する工事について十分な経験がない
  • 材料費や外注費を売上原価に含めていない
  • 売上の入金時期を考慮していない
  • 生活費を含めた返済可能性を確認していない
  • 自己資金が短期間に突然入金されている
  • 税金、公共料金、既存の借入金に支払いの遅れがある
  • 融資実行前に高額な車両や設備を購入してしまう

特に、借りられる金額から計画を作るのではなく、事業に本当に必要な金額を計算し、その根拠を示すことが大切です。

創業融資を考え始めた方へ。まずは日本政策金融公庫を知っておきましょう

日本政策金融公庫の創業融資を利用するメリットとは?

まとめ

建設業は、経験や技術、人脈を生かして独立しやすい一方、材料費や外注費を先に支払い、工事代金を後から受け取ることが多い業種です。

創業融資を検討するときは、車両や工具などの設備資金だけでなく、入金までの支払いを支える運転資金も計算しましょう。

事業計画書では、特に次の点を明確にすることが重要です。

  • これまでにどのような工事を経験したか
  • 独立後の仕事をどこから受注するか
  • 工事単価と受注件数をどのように見込んだか
  • 材料費や外注費をいつ支払うか
  • 工事代金がいつ入金されるか
  • 建設業許可が必要か

建設業の創業融資・会社設立をサポートします

建設業の創業計画書では、工事経験や受注予定を記載するだけでなく、材料費・外注費の先払いと工事代金の入金時期を踏まえて、必要な運転資金を説明することが重要です。

当事務所では、建設業で独立を予定している方に対し、会社設立、創業計画書の作成、資金調達、建設業許可を見据えた開業準備をサポートしています。

「いくら借りればよいか分からない」「売上予測の作り方に不安がある」「会社設立と融資、建設業許可をどの順番で進めればよいか迷っている」という方は、お気軽にご相談ください。

※融資の可否や条件は審査によって決まり、希望どおりの融資を受けられることを保証するものではありません。制度の内容は変更されることがあるため、申込みの際は各機関の最新情報をご確認ください。

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