運送業で独立・開業する場合、トラックなどの車両だけでなく、営業所や車庫の確保、人件費、保険料など、事業開始前からまとまった資金が必要になることがあります。
特に一般貨物自動車運送事業では、許可を取得するためにも一定の資金計画が求められるため、会社設立や創業融資をどのタイミングで進めるかが重要です。
この記事では、これから運送業で開業・会社設立を考えている方に向けて、創業融資を申し込む際に押さえておきたいポイントを解説します。
1.まず確認したい「一般貨物」と「軽貨物」の違い
一口に運送業といっても、使用する車両などによって必要な手続きが異なります。
一般貨物自動車運送事業
トラックなどを使用して、荷主から運賃を受け取って貨物を運送する事業です。
一般貨物自動車運送事業を始めるには、国土交通大臣の許可が必要です。原則として営業所ごとに5両以上の車両を配置する必要があり、営業所・車庫・運行管理体制・資金計画などについても基準があります。
そのため、1台の車両だけで始められる事業と比べると、創業時に必要となる資金も大きくなりやすいのが特徴です。
貨物軽自動車運送事業
いわゆる「軽貨物」「黒ナンバー」と呼ばれる事業です。
一般貨物のような許可制ではなく、営業所を管轄する運輸支局への経営届出などにより事業を始めることができます。個人・法人のどちらでも届出が可能です。
軽貨物の場合は比較的小さな資金で開業できるケースもありますが、車両購入費や当面の運転資金をどのように確保するかは、やはり重要です。
2.運送業の創業時にはどんな資金が必要?
運送業の創業では、主に次のような費用が想定されます。
- トラック・軽貨物車両などの購入費
- 車両のリース費用
- 営業所・車庫の契約費用
- 駐車場代
- 燃料費
- 車両保険・各種保険料
- ドライバーなどの人件費
- 車両整備・修理費
- ETC・ドライブレコーダーなどの設備費
- 広告宣伝費
- 開業後の当面の運転資金
運送業の場合、「車両さえ用意すれば開業できる」と考えてしまうと、資金計画が不足することがあります。
車両を動かせば燃料費や高速道路料金などが発生しますし、売上代金が実際に入金されるまでには一定の期間があります。
そのため、車両購入資金だけでなく、開業後数か月間の運転資金まで含めて考えることが大切です。
3.一般貨物では「許可の資金計画」と「創業融資」を一緒に考える
一般貨物自動車運送事業を始める場合、特に注意したいのが資金計画です。
許可申請では、車両費、人件費、営業所・車庫の費用、保険料など、事業開始に必要となる所要資金を計算します。
国土交通省の申請手引きでも、車両を購入する場合には取得費や割賦金、リースの場合には一定期間のリース料、さらに税金や保険料などを資金計画に含めることとされています。
また、一般貨物の許可では、事業開始に必要な資金を確保していることが審査されます。残高証明書などによる確認も行われるため、単に「融資を受ける予定だから大丈夫」と考えるのではなく、許可申請と融資実行のタイミングを整理しておく必要があります。
ここは運送業の創業で特に注意したいポイントです。
会社設立 → 許可申請 → 創業融資
と単純に順番を決めるのではなく、
いつ会社を設立するのか、自己資金をどこに置くのか、いつ融資を申し込むのか、いつ車両を契約するのか
まで含めて全体のスケジュールを考える必要があります。
4.創業融資では「売上の根拠」を具体的にする
日本政策金融公庫では、新規開業・スタートアップ支援資金などにより創業者への融資を行っています。
運送業で創業融資を申し込む場合には、事業計画書の中で、
「どのような荷物を」
「誰から依頼を受け」
「どの地域へ運び」
「1日何件程度配送し」
「いくらの売上になるのか」
を具体的に説明できるようにしておきましょう。
例えば、
1台当たりの1日の売上 × 稼働日数 × 稼働台数
という形で考えると、売上予測の根拠を整理しやすくなります。
すでに取引予定の荷主や元請会社がある場合は、その内容も重要な材料になります。
反対に、「開業すれば仕事は取れると思う」というだけでは、売上計画の説得力が弱くなってしまいます。
5.運送業の経験は事業計画の重要なポイント
創業融資では、これまでの経験とこれから始める事業との関係も重要です。
例えば、
- 運送会社でドライバーとして働いていた
- 配車や運行管理に携わっていた
- 運送会社の営業を担当していた
- 物流会社で荷主との取引経験がある
- 独立後も以前の取引先から仕事を受ける予定がある
といった経験があれば、事業計画書の中できちんと説明しておきたいところです。
運送業は、単に車を運転できれば経営できるわけではありません。
荷主の確保、配車、運行管理、車両管理、ドライバーの確保など、事業者として行う仕事は多くあります。
これまでの経験を「何年間勤務していた」というだけで終わらせず、独立後の事業にどのように活かせるのかまで説明するとよいでしょう。
6.車両は「購入ありき」で考えない
運送業の創業では、車両が大きな設備投資になります。
新車を購入するのか、中古車を購入するのか、リースを利用するのかによって、必要資金は大きく変わります。
創業当初から必要以上に高額な車両をそろえてしまうと、その分だけ資金負担も大きくなります。
一方で、中古車を安く購入しても、修理費が多く発生すれば資金繰りを圧迫する可能性があります。
そのため、
「融資をいくら受けられるか」から車両を決めるのではなく、「事業を始めるためにどの車両が必要か」から資金計画を作る
ことが大切です。
車両の見積書なども早めに準備しておくと、創業融資の事業計画を作りやすくなります。
7.会社設立・許可・融資の順番に注意する
運送業を法人で始める場合には、会社設立と許可申請、創業融資を並行して考える必要があります。
特に一般貨物では、許可申請から許可まで一定の期間が必要です。
関東運輸局では、標準処理期間の目安を3~5か月としており、その後も運行管理者・整備管理者の選任や車両登録などを経て運輸開始となります。
そのため、
「会社を作ってから考えればよい」
「融資が決まってから許可を申請すればよい」
とは限りません。
会社設立前の段階から、許可取得までの期間と必要資金を確認し、全体のスケジュールを組んでおくことをおすすめします。
8.まとめ|運送業の創業融資は「許可」と「資金計画」をセットで考える
運送業は、車両などへの設備投資が必要となりやすく、創業融資との相性がよい業種の一つです。
一方で、特に一般貨物自動車運送事業では、営業所、車庫、車両、人員、資金などについて許可基準があります。
そのため、
「会社を設立する」
「運送業の許可を取得する」
「創業融資を受ける」
という3つを別々に考えるのではなく、最初から一つの創業計画として整理することが重要です。
運送業での会社設立・創業融資をお考えの方へ
運送業で開業する場合、会社設立だけでなく、一般貨物自動車運送事業の許可や車両の準備、創業融資の申込みなど、事業開始までに検討することが多くあります。
特に一般貨物では、会社設立の時期や自己資金、許可申請の資金計画と創業融資のタイミングが関係するため、最初の計画が重要です。
当事務所では、これから運送業で会社設立・創業を予定している方の状況を確認しながら、会社設立や創業融資に向けた準備をサポートしています。
「何から始めればよいのか分からない」「会社設立と融資のどちらを先に進めるべきか迷っている」という方は、お気軽にご相談ください。
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