「若いうちに自分の事業へ挑戦したい」「会社を設立したいが、開業資金が足りない」と考えている方もいるのではないでしょうか。
若い方の創業には、新しい技術やサービスを取り入れやすいという強みがあります。一方、勤務経験や自己資金の蓄積期間が短く、創業融資の審査に不安を感じる方も少なくありません。
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、35歳未満の方に特別利率が適用されます。ただし、年齢だけで融資を受けられるわけではなく、事業経験や売上の見込みを具体的に示すことが重要です。
この記事では、35歳未満の方が創業融資を申し込むときに、特に準備しておきたいポイントを解説します。
1.35歳未満の方が対象となる創業融資とは
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、35歳未満の方などを対象とする制度です。
開業に必要な設備資金と運転資金に利用でき、35歳未満の方には原則として特別利率Aが適用されます。特別利率Aは、通常の基準利率より低く設定された利率です。ただし、土地にかかる資金には基準利率が適用されます。
制度の融資限度額、返済期間や利率などの詳しい内容については、こちら
2.若いことだけで審査が有利になるわけではない
35歳未満であれば特別利率の対象となりますが、若いこと自体が融資審査を有利にするわけではありません。
公庫は、創業計画書などを通じて、事業計画が適正であり、その計画を実行する能力があるかを確認します。そのため、次のような点を具体的に説明できるようにしておく必要があります。
- なぜこの事業を始めるのか
- これまでにどのような経験を積んだのか
- 商品やサービスを誰に、いくらで販売するのか
- どのように顧客を獲得するのか
- 必要な資金をどのように計算したのか
- 売上から経費と借入金の返済を賄えるのか
「若いので行動力がある」「将来性がある」という説明だけでは、事業の実現可能性を十分に伝えることはできません。
3.勤務経験が短い場合の説明方法について
若い方の場合、創業する業種での勤務年数が短いことがあります。しかし、年数だけでなく、実際に担当した業務や身につけた技術を具体的に示すことが大切です。
例えば、Web制作業であれば、「制作会社に3年間勤務した」と書くだけでなく、次のような内容まで整理します。
- 担当したサイトの種類や件数
- 顧客との打合せや見積りの経験
- 使用できるソフトや技術
- 制作後の保守や集客支援の経験
- 独立後に依頼が見込まれる顧客の有無
勤務経験が短くても、担当業務、成果、資格、研修歴などを示すことで、事業を実行できる根拠を補うことができます。
反対に、これまでの仕事と関係のない業種で開業する場合は、資格の取得、実務研修、試験的な販売など、開業前にどのような準備をしたのかを説明する必要があります。
4.副業や個人での実績も整理する
会社員としての経験だけでなく、副業や個人で行った仕事も、事業の実現可能性を示す材料になります。
例えば、次のような資料が考えられます。
- 制作物やポートフォリオ
- 顧客から受注した実績
- 売上の入金記録
- SNSやホームページの運用実績
- 見込み客からの相談や依頼内容
- 資格証明書や研修の修了証
ただし、「SNSのフォロワーが多い」「知人から依頼を受ける予定」と説明するだけでは不十分です。実際の集客や売上にどのようにつながるのかまで示しましょう。
なお、勤務先の副業規定、秘密保持義務、競業避止義務などには注意が必要です。前職の顧客情報や制作物を、許可なく実績資料として使用することは避けなければなりません。
5.自己資金が少ない場合に考えること
若い方は貯蓄できる期間が短いため、自己資金を十分に用意できないことがあります。現在の制度には一律の自己資金要件はありませんが、自己資金は、創業に向けて計画的に準備してきたことを示す重要な材料の一つです。
一般的には希望融資額の1/3を用意すべきと思われます。
自己資金が少ない場合は、すぐに希望融資額を増やすのではなく、開業計画そのものを見直すことも必要です。
- 開業時に本当に必要な設備を絞る
- 中古設備やレンタルを検討する
- 自宅や小規模な事務所から始める
- 売上が増えてから追加する設備を分ける
- 広告費や外注費の使い道を具体化する
- 開業後の運転資金を残しておく
また、申込み直前に入金された資金については、その出所を説明できるようにしておきましょう。家族から支援を受ける場合も、贈与なのか借入れなのかを曖昧にしないことが大切です。
6.売上計画は数字の根拠を示す
若者の創業では、Web制作、システム開発、動画制作、インターネット販売など、比較的少ない設備で始められる事業もあります。しかし、初期費用が少ないことと、安定して売上を確保できることは別の問題です。
売上計画は、次のように分解して作成します。
単価×受注件数=月間売上
例えば、Webサイト制作を月2件受注する計画であれば、なぜ毎月2件を受注できるのかを、過去の実績、見込み客、営業方法、紹介先などから説明します。
開業当初から理想的な件数を受注できるとは限りません。認知度や営業活動を踏まえ、売上が段階的に増える計画にした方が現実的な場合もあります。
7.一人で対応できない業務の体制を決めておく
若い方の創業では、少人数または一人で事業を始めるケースも多くあります。その場合は、営業、制作、経理、顧客対応などをすべて無理なく行えるかを確認しましょう。
自分では対応できない業務を外注する場合は、外注先、業務内容、費用や支払条件を整理します。複数人で創業する場合も、それぞれの役割や責任を明確にしておく必要があります。
特定の協力者がいなければ事業が成り立たない計画であれば、その協力関係を説明できる資料があると、事業体制を伝えやすくなります。
8.個人事業か会社設立かを事業に合わせて選ぶ
創業融資を受けるためだけに、株式会社や合同会社を設立する必要はありません。個人事業と法人のどちらが適しているかは、取引先、共同経営者、許認可、採用予定、将来の事業展開などを踏まえて判断します。
法人として融資を申し込む場合は、原則として会社設立後に法人名義で申し込みます。そのため、資本金、本店所在地、事業目的などを決める前に、必要資金や許認可との関係を整理しておくことが大切です。
特に、定款や登記に記載した事業内容と、創業計画書の内容に食い違いが生じないよう注意しましょう。
9.申込み前に確認したいポイント
創業融資を申し込む前に、次の項目を確認しましょう。
- 申込時点で制度の年齢要件を満たしているか
- 創業する事業に関する経験を具体的に説明できるか
- 副業や制作実績を示す資料があるか
- 自己資金の出所や蓄積経過を説明できるか
- 設備資金の見積書を取得しているか
- 売上予測を単価と件数に分けているか
- 見込み客や営業方法が具体的になっているか
- 外注先や協力者の役割を整理しているか
- 借入れ後の返済を含めた資金繰りを確認しているか
- 会社設立、許認可、融資申込みの順序を検討しているか
まとめ
35歳未満の方は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」において、原則として特別利率Aの対象になります。
ただし、若いことだけで融資を受けられるわけではありません。勤務経験が短い場合は、担当業務、資格、副業実績、ポートフォリオなどを整理し、事業を実行できる根拠を具体的に示すことが重要です。
また、自己資金が少ない場合は、必要な設備や開業規模を見直し、無理のない資金計画を作りましょう。売上計画についても、単価、受注件数、営業方法や見込み客などの根拠が必要です。
※本記事の制度内容は2026年9月4日時点の情報を基にしています。融資制度や利率などは変更される場合があるため、申込時には日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。
まとめ
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、女性、35歳未満または55歳以上の方が、開業資金を準備する際に検討したい融資制度です。
設備資金は20年以内、運転資金は10年以内の返済期間を設定でき、対象者には原則として特別利率Aが適用されます。一方、対象年齢などを満たしていても、融資には審査があります。創業経験、自己資金、売上の根拠、返済可能性を創業計画書で具体的に説明することが重要です。
また、法人として申し込む場合は、融資金を資本金に充てることはできません。会社設立に必要な資金と、開業後に必要な事業資金を分けて準備しましょう。
※本記事の制度内容は2026年9月4日時点の情報を基にしています。融資制度、金利、審査上の取扱いは変更される場合があるため、申込時には日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。
若者の会社設立と創業融資をサポートします
若い方の創業では、「経験年数が短く、どのように強みを伝えればよいかわからない」「自己資金に合わせた開業規模を決められない」「会社設立と融資申込みの順序に迷っている」といった悩みが生じることがあります。
これまでの経験、副業実績、資格や開業準備を整理し、事業の強みや売上の根拠を創業計画書に反映できるようサポートいたします。株式会社・合同会社の設立と創業融資を一緒に検討したい方は、お気軽にご相談ください。
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