行政書士の田中さん

自己資金を使い切らない開業資金の考え方|創業時に日本政策金融公庫の融資を検討すべき理由

会社設立や個人事業の開業を考えるとき、多くの方がまず気にするのは「自己資金で開業できるか」という点です。

もちろん、自己資金は創業準備において重要です。自己資金があることで、開業前の準備を進めやすくなりますし、融資を受ける場合にも、計画的に準備してきたことを示す材料になります。

ただし、自己資金だけで開業できることと、自己資金だけで開業したほうがよいことは、必ずしも同じではありません。

開業時には、物件取得費、内装費、設備費、広告宣伝費、仕入れ、人件費、会社設立費用など、さまざまな支出があります。さらに、開業後すぐに売上が安定するとは限りません。

自己資金をすべて使い切ってしまうと、予定外の支出や売上の遅れに対応しにくくなります。

そこで検討したいのが、日本政策金融公庫の創業融資を活用し、手元資金を残した状態で開業する方法です。

この記事では、借入を増やすという視点ではなく、資金に余裕を持って開業するための考え方を解説します。

1.開業時に大切なのは「始める資金」だけではない

開業準備では、どうしても初期費用に目が向きます。

店舗ビジネスであれば、物件取得費、内装工事費、厨房設備、什器備品などが必要になります。サービス業であれば、ホームページ制作費、広告費、備品購入費、事務所費用などがかかります。

しかし、開業資金を考えるときは、初期費用だけでなく、開業後の運転資金も含めて考える必要があります。

資金の種類

内容

開業前に必要な資金

物件取得費、内装費、設備費、備品、会社設立費用など

開業後に必要な資金

家賃、人件費、仕入れ、広告費、外注費、当面の生活費など

事業は、開業した瞬間から売上が安定するわけではありません。売上が少ない時期でも、家賃や人件費、仕入れ、広告費などは発生します。

そのため、開業資金は、
「開業するためにいくら必要か」だけでなく、
「売上が安定するまでにいくら残しておくべきか」
まで考えることが大切です。

2.自己資金を使い切ると、開業後の選択肢が少なくなる

自己資金を使い切って開業すると、開業後の行動が制限されやすくなります。

たとえば、思ったより集客に時間がかかった場合、広告費を追加したくても資金が足りないことがあります。仕入れを増やしたい、設備を修理したい、人を採用したいという場面でも、手元資金が少ないと判断が難しくなります。

創業直後に大切なのは、無駄な支出を抑えることだけではありません。

必要なタイミングで、必要な投資ができる状態を作っておくことです。

その意味で、創業時の融資は、単なる借金ではなく、事業を安定させるための資金余力を持つ手段ともいえます。

3.日本政策金融公庫の創業融資は、手元資金を残すための選択肢になる

創業時の資金調達先として、まず検討しやすいのが日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫は、創業期の方を支援する融資制度を用意しており、開業前または開業間もない方でも、事業計画や自己資金、経験、資金使途などをもとに審査を受けることができます。

日本政策金融公庫の創業融資には「新規開業・スタートアップ支援資金」といったメニューが用意されています。

制度の詳しい内容や融資条件については、別記事で詳しく解説するとして、ここでは創業時の資金計画の選択肢として押さえておけば十分です。

創業融資を考え始めた方へ。まずは日本政策金融公庫を知っておきましょう

4.創業融資を検討したほうがよいケース

すべての創業者が必ず融資を受けるべき、というわけではありません。

自己資金が十分にあり、開業後の運転資金にも余裕があり、売上の見込みも堅い場合には、無理に借入をする必要はありません。

一方で、次のような場合は、日本政策金融公庫の創業融資を検討する価値があります。

  • 開業後の手元資金が少なくなりそうな場合
  • 売上が安定するまで数か月かかりそうな場合
  • 店舗や設備にまとまった初期投資が必要な場合
  • 広告宣伝費をしっかり確保したい場合
  • 仕入れ資金や人件費を準備しておきたい場合
  • 自己資金をすべて使い切ることに不安がある場合

特に店舗ビジネスでは、開業前に大きな支出が発生しやすくなります。物件取得費、保証金、内装工事、厨房設備、看板、備品、広告費などを支払うと、想像以上に手元資金が減ってしまうことがあります。

そのため、開業前の段階で、自己資金をどこまで使うのか、不足分を融資で補うべきかを整理しておくことが重要です。

5.融資は「多く借りること」ではなく「資金繰りを安定させること」が目的

創業融資を検討するときは、「いくら借りられるか」だけに意識が向きがちです。

しかし、大切なのは、必要な金額を、必要な理由に基づいて借りることです。

設備資金として使うのか、運転資金として使うのか、広告費や仕入れ資金として使うのかによって、資金計画の考え方は変わります。

また、借入金額は多ければよいというものではありません。返済できる範囲で、事業に必要な金額を計画的に借りることが重要です。

創業融資の目的は、借入額を増やすことではなく、開業後の資金繰りを安定させることです。

6.まとめ:自己資金を守ることも、創業準備の一つ

創業時に自己資金を用意することは、とても大切です。

しかし、自己資金をすべて使い切って開業してしまうと、開業後の資金繰りに余裕がなくなることがあります。

開業直後は、予定どおりに売上が立たないこともあります。広告費、仕入れ、人件費、家賃など、開業後も継続して資金は必要になります。

そのため、創業前の段階で日本政策金融公庫の創業融資を検討し、資金に余裕を持った状態で開業することは、堅実な経営判断の一つです。

もちろん、融資は誰でも必ず受けられるものではありません。事業計画、自己資金、経験、資金使途、返済可能性などをもとに審査されます。

だからこそ、開業直前になって慌てるのではなく、早い段階で資金計画を整理しておくことが重要です。

「自己資金だけで始めてよいのか」
「日本政策金融公庫の創業融資を使うべきか」
「開業後の手元資金をどのくらい残すべきか」
「いくら借りるのが適切なのか」

このように迷っている方は、開業前の段階で一度ご相談ください。

当事務所では、会社設立だけでなく、日本政策金融公庫の創業融資を見据えた資金計画や創業計画書の作成サポートも行っています。

自己資金を使い切る開業ではなく、資金に余裕を残す開業を一緒に考えていきましょう。

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