「会社を作りたいのですが、どれくらいの期間がかかりますか?」会社設立の相談を受けていると、最初に必ずと言っていいほど聞かれる質問です。
インターネットを見ると、
- 「最短●日で設立できます」
- 「かんたんに自分でできます」
という情報も多く、「本当にそんなに早くできるの?」と不安になる方も少なくないでしょう。
実際の設立に際しては、
- 事前の準備にどれだけ時間をかけられるか
- 会社の内容(商号、役員構成、出資者、本店所在地など)
- 創業融資の申込みや、物件契約のタイミング
などによって、必要な期間は変わってきます。
ここでは、実際に相談を受けてきた経験も踏まえながら、会社を設立するまでの基本的な流れと期間の目安、そして設立登記完了後に行うことを含めて8つのステップに分けて整理して説明します。
1.会社設立にかかる期間の「ざっくり目安」
標準的なケースでは、次のようなイメージです。
- 事業内容・会社の基本事項を決める … 数日〜1週間
- 定款作成・(株式会社なら)公証役場で認証 … 数日〜1週間
- 出資金の払い込み〜設立登記 … 数日〜1週間
トータルで見ると、
相談してから 約3週間前後
を目安にしておくと、比較的ゆとりを持って進めやすい印象です。
合同会社においては、定款の認証を受ける必要がないので約1週間短くなり
約2週間前後を目安にできます。
もちろん、あらかじめ
- 商号(会社名)
- 事業内容
- 本店所在地
- 出資者・役員構成
などが固まっていれば、もう少し短縮できることもあります。
2.会社の設立、設立後の8つのステップ
STEP1 商号(会社名)・事業内容・本店所在地・資本金などの基本事項の決定
最初のステップは、いわば「会社の設計図」を作る段階です。
- 商号(会社名)を何にするか
- どんな事業をする会社なのか(事業内容)
- どこで会社を設立するか(本店所在地)
(自宅か、賃貸オフィスか、シェアオフィスか 等) - 資本金をいくらにするか
- 決算月をいつにするか
- 出資者・役員構成(誰がいくら出資し、誰が代表になるか)
といったことを整理していきます。
この段階があいまいなまま進めると、
- 設立後に事業目的の追加が必要になったり
- 出資のルールでもめたり
といったトラブルにもつながりやすいため、多少時間をかけてでも、ここはしっかり固めておくのが大切です。
STEP2 会社の形態を決める(株式会社か合同会社か など)
次に、「どの形で会社を作るか」を決めます。
- 株式会社
- 合同会社(LLC)
が代表的です。
ここでは、
- 将来のイメージ(出資者を増やしたいか、上場を視野に入れるか)
- 対外的な印象(取引先のイメージ)
- 設立費用・維持コスト
- 意思決定の仕組み(誰がどのように決めていくか)
などを踏まえて選ぶことになります。
期間だけで見ると、定款認証が不要な合同会社の方が、多少早く設立できる傾向がありますが、長期的な事業計画も含めて考えるのが良いでしょう。
STEP3 定款の作成(株式会社の場合は公証役場で認証)
定款は、会社の基本的なルールを書き込んだいわば「会社の憲法」のようなものです。
- 目的(どのような事業を行うか)
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 資本金
- 発行可能株式総数(株式会社の場合)
- 事業年度(決算月)
- 役員の構成
などといった内容を定めます。
株式会社の場合は、この定款を公証役場で「認証」してもらう必要があります。
公証役場の予約状況によっても、必要な日数が変わってきますが、定款の作成〜認証までで、約1週間程度を見ておくと安心です。
合同会社の場合は、定款認証は不要ですので、このステップが少し短くなります。
STEP4 出資金の払い込み
定款の認証を受けた後、次は「出資金の払い込み」です。
一般的には、
- 発起人(出資者)の個人名義の銀行口座に出資金を振り込み
- 通帳のコピーなどを払い込みの証拠として申請書に添付
する形が使われます。
出資者が複数いる場合は、振込のタイミングを決める必要がありますので、あらかじめ日程の調整をしておくとスムーズです。
STEP5 法務局への設立登記申請(本店所在地を管轄する法務局)
出資金の払い込みまで済んだら、いよいよ法務局への「設立登記の申請」です。
- 登記申請書
- 定款
- 役員の就任承諾書
- 払込証明書
- 印鑑届書
など、必要書類を揃えて、本店所在地を管轄する法務局に提出します。
ここで重要なのは、法務局に設立登記を申請した日が、「会社の成立日」になる
という点です。
「〇月〇日は、記念日だから、この日にしたい」
「大安に設立したい」
といったことを考えると申請した日に合わせてスケジュールを組むことが重要です。
また、設立登記の申請は土日祝日が法務局の休みのため、その日は設立日にできませんので注意が必要です。
STEP6 税務署・都税事務所・年金事務所・労働基準監督署などへの各種届出
STEP1~5で登記を申請したのち約3~4週間後に登記が完了します。
登記が完了したら、次は各官公庁への届出を行います。
主なものとしては、
- 税務署
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書 など
- 都税事務所
- 法人設立に関する届出書 など
- 年金事務所(従業員がいる場合)
- 健康保険・厚生年金の新規適用届 など
- 労働基準監督署・ハローワーク(従業員がいる場合)
- 労災保険・雇用保険の手続き
などが挙げられます。
これらは、会社としてきちんとスタートするための「開業後の初期手続き」ですので、
設立後、間を空けず速やかに進めていくことが大切です。
STEP7 銀行口座の開設
法人名義の銀行口座も、会社運営には欠かせません。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 会社の印鑑証明書
- 代表者の本人確認書類
- 事業内容が分かる資料(パンフレットやホームページなど)
などを準備し、金融機関の審査を経て、口座が開設されます。
最近は、マネーロンダリング対策の観点から、口座開設にあたって事業内容の確認が以前より厳しくなっている印象もあり、場合によっては、口座開設までに少し時間がかかることもあります。
STEP8 各種許認可の申請(必要な業種のみ)
業種によっては、会社設立だけでは事業が始められず、別途、許認可の取得が必要なケースがあります。
例)
- 建設業許可
- 古物商許可
- 宅建業免許
- 飲食店営業許可
- 産業廃棄物収集運搬業の許可 など
許認可には、それぞれ
- 人的要件(資格・経験)
- 財産的要件(自己資本・財務内容)
- 事務所要件(専用スペースの有無)
などの条件があり、申請から許可が下りるまでにも時間がかかります。
「設立がゴール」ではなく、実際に営業を開始できるまでの全体スケジュールをイメージしておくことが大切です。
3.スケジュールが延びやすい「よくある原因」
実際の実務の場面では、次のようなところでスケジュールが伸びることが多いです。
- 会社名・本店住所・事業内容がなかなか決まらない
- 共同創業者同士で、出資割合や役割分担がまとまらない
- 事業目的の書き方を迷ってしまい、定款の修正が続く
- 印鑑証明書など、必要書類の準備に時間がかかる
- 許認可や創業融資のスケジュールとの整合が取れていない
逆に言えば、これらのポイントを意識して準備しておくことで、会社設立の期間は、かなりコントロールしやすくなります。
4.スムーズに進めるためのコツ
最後に、会社設立をスムーズに進めるための「コツ」を、いくつか挙げておきます。
- 「いつ頃から事業を本格始動したいか」を最初に決める
- そこから逆算して、設立日や手続きのタイミングを考える。
- 創業融資や物件契約の予定を、早めに整理しておく
- 家賃や人件費が発生し始める時期とのバランスが重要です。
- 商号・住所・事業内容の候補を紙に書き出しておく
- 頭の中だけで考えるより、具体的に整理が進みます。
- 必要であれば、専門家に早めに相談する
- 自分だけでは気づきにくい「落とし穴」を事前に避けやすくなります。
5.まとめ:会社設立は「全体の道筋」を見ながら進める
この記事では、
- 事業内容・会社名・本店住所・資本金などの基本事項を決める
- 会社の形態を決める(株式会社か合同会社か など)
- 定款の作成(株式会社の場合は公証役場で認証)
- 出資金の払い込み
- 法務局への設立登記申請
- 税務署・都税事務所・年金事務所・労働基準監督署などへの各種届出
- 銀行口座の開設
- 各種許認可の申請(必要な業種のみ)
という8つの基本ステップをベースに、で会社を設立するまでの流れを整理しました。
もう一度ポイントをまとめると、
- 一般的には、相談から2~3週間前後がひとつの目安
- 会社設立は「登記」だけでなく、その後の届出・口座開設・許認可まで含めて考える
- 設立日・融資・物件契約などをバラバラではなく、全体の流れとして設計することが大切
ということになります。
「事業を始めるにあたり会社を作ろうかな」と考え始めた段階で、まずは今回の8つのステップをざっと眺めてみて、
- 自分の事業には、どの部分が特に重要になりそうか
- どのタイミングで誰に相談しておくと安心か
をイメージしておくと、会社設立までの道のりが、ぐっと分かりやすくなるはずです。
6.当事務所にご依頼いただくメリット
会社設立から創業後の手続きまで「まとめて相談」できる
会社設立は、
設立前の準備(会社の基本設計・スケジュールの組み立て)
設立登記に必要な書類の作成サポート
設立後の各種届出(税務・社会保険・労働保険など)のご案内
業種によって必要となる許認可の確認
と、いくつもの工程がつながっています。
当事務所では、「どこから何を始めればいいのか」という段階からご相談をお受けし、会社設立〜創業直後の各種手続きまで、全体の流れを見通しながらサポートいたします。
※登記申請、税務署等の届出はネットワークを組んだ司法書士、税理士、社会保険労務士等が行います。
