行政書士の田中さん

「削る」のは消費、「使う」のは投資――“費用収益対応の原則”で経費判断がブレなくなる

起業したばかりの時期は、売上がまだ安定しないのに、支払いだけは毎月きっちり来ます。
だからこそ「経費を抑えたい」と思うのはごく自然のことです。

ただ、抑え方を間違えると、必要な支出まで止めてしまい、売上も信用も伸びにくくなります。
そこで役に立つ“判断軸”が、会計の基本である 費用収益対応の原則です。

費用収益対応の原則とは?(経費判断に使える形で)

費用収益対応の原則は、ざっくり言うとこうです。

「その収益を得るために必要だった費用は何か」を対応させて考える

つまり、経費を使う時にこう問うてみましょう。

  • この支出は どんな収益(売上・利益)に結びつくのか
  • いつ・どうやって回収するのか
  • そもそも 収益と関係がある支出なのか

この視点が入ると、経費の見方が「節約」から「収益につなげる設計」へ変わります。

経費は「投資(対応する費用)」と「消費(対応しにくい費用)」に分かれる

費用収益対応の原則を、日々の支出判断に落とすとシンプルになります。

投資(収益に対応する費用)

将来の売上や利益に結びつく支出です。

  • 受注が増える(営業、広告、紹介導線づくり)
  • 単価が上がる(提案資料、実績づくり、品質改善)
  • 作業時間が減る(効率化ツール、外注、仕組み化)
  • 信用が上がる(ホームページ整備、契約書、実務体制)
  • リスクが減る(法務・税務の整備、トラブル予防)

消費(収益に対応しにくい費用)

使った時点で満足はあるが、収益に結びつきにくい支出です。

  • 見栄・体裁のための支出
  • 惰性で続く付き合い
  • 目的が曖昧な買い物やサブスク
  • 「後で説明できない」支出

創業期に大切なのは、まず 消費を減らして投資に回す余白を作ることです。

交際費は“費用と収益の対応”が崩れやすい代表格といえるでしょう。

交際費は「必要な場面」もあります。
経営者が「仕事をもらうために必要なんです」と言うのも、実際にあります。

ただ、交際費は最も危険でもあります。
なぜなら、費用と収益の対応が曖昧になりやすいからです。

よくある“消費交際費”

  • 目的がない(とりあえず参加)
  • 見栄の出費(高い店、過剰な手土産)
  • 惰性(断れないから)

「種まき」と言って使っていても、
蒔いたつもりが、ただ無駄遣いしているだけ…ということも起きます。

交際費を“投資(対応する費用)”に変える4つのルール

交際費を削るのではなく、投資として成立する形に整えるのが現実的です。

  1. 目的を先に決める
    例:紹介をもらう/提携の相談/見積依頼を取る
  2. ゴールは「次の一手」
    例:次回打合せの日程/提案資料送付/見積提示
  3. 予算は上限を先に決める
    雰囲気で膨らむのを止める
  4. 軽く記録する(誰と・何を・次は何を)
    これだけで「費用と収益の対応」が可視化されます。

「1万円の支出」は“売上”ではなく“利益”で考える

1万円の支出は、それを投下資本として生産性のあるものに支出すれば、数年後には10万円になります。一方、消費してしまった金銭はゼロです。

現在の1万円は、将来の1万円ではないことを知らなければなりません。しかも、純利益で1万円を儲けることは大変なことです。消費してしまう1万円は純利益の1万円だということも意識しなければなりません。

支出前にこれだけでOK:費用収益対応チェック

迷ったときは、次の5つだけで判断できます。

  1. この支出は何の収益につながる?(受注・単価・紹介・継続など)
  2. いつ回収できる?(期限が言えないなら危険)
  3. 測れる?(数字 or 行動で追えますか?)
  4. 小さく試せる?(単発、無料枠、レンタルなど)
  5. 代替できる?(別手段で同じ目的を達成できるのか?)

答えが曖昧なら、その支出は“消費寄り”の可能性が高いです。

最後に:「ケチ」と「渋ちん」を間違えない

経費を抑えようとして、投資まで止める人がいます。
それでは成長は止まりますし、取引先からの信用にも響きます。

よく言われていた古い例えでまとめると、

  • ケチ:必要な時“以外”は使わない
  • 渋ちん:必要な時“も”使わない

経営者は ケチでOK
でも 渋ちんになると、収益機会を失うので注意です。

まとめ:経費は「節約」ではなく「収益に通じる支出」

費用収益対応の原則を、創業期の経費判断に使うとこうなります。

  • 収益に対応する費用(投資)は使う
  • 収益に対応しにくい費用(消費)は減らす
  • 特に交際費は「目的・次の一手・記録」で投資化する
  • 1万円は“利益の1万円”として扱う
  • ケチでいいが、渋ちんになるな

この軸があると、経費の判断がブレなくなります。
そして、資金繰りも、売上づくりも、両方がやりやすくなる事でしょう。

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