個人事業主でも建設業許可は取得できる?取得要件・メリット・注意点を解説

建設業を営む個人事業主の方からよくいただくご相談の一つに、

「個人事業主でも建設業許可は取得できますか?」

というご質問があります。

結論から申し上げると、一定の要件を満たすことで、個人事業主の方でも建設業許可を取得することは可能です。ただし、法人と同じようにクリアしなければならない条件がいくつかありますので、今回はその詳細と取得によるメリット・デメリット、さらには法人成りとの比較についてもご紹介いたします。

1.個人事業主でも建設業許可は取得できる

まず大前提として、建設業許可は法人だけでなく個人事業主の方でも取得することが可能です。

ただし、許可を取得するには以下のような要件をすべて満たす必要があります。

建設業許可の主な取得要件(法人・個人共通)

  • 経営業務の管理責任者がいること(5年以上の経営経験など)

  • 専任技術者がいること(資格・実務経験要件あり)

  • 請負契約金額が500万円以上の工事を受注する場合に許可が必要

  • 資金要件(500万円以上の自己資金等)

  • 営業所が独立性を有していること

  • 欠格要件に該当しないこと(過去に行政処分を受けていない等)

上記の要件は法人でも個人事業主でも基本的に同じです。

社会保険の加入義務について

法人と異なり、5人未満の個人事業主の場合は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務はありません。ただし、雇用保険や労災保険については、従業員を雇っている場合に加入義務が発生します。

2. 建設業許可を取得するメリット・デメリット

メリット

  • 元請業者(発注者)からの信頼度が向上する
    許可業者として登録されることで、業歴や技術力の証明にもなり、受注機会が増えることがあります。

  • 500万円以上の工事を受注できるようになる
    建設業許可がない場合、請負金額500万円(税込)以上の工事を請け負うことができません。
    ※建築一式工事は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上

デメリット

  • 取得費用・更新費用がかかる
    例えば、知事許可の場合には9万円(申請手数料)が必要です。また、許可は5年ごとに更新が必要で、その都度5万円の手数料が発生します。

  • 毎年の決算報告義務がある
    許可取得後は、毎年決算終了後に決算変更届を行政庁に提出する義務があります。

3. 法人成りしてから許可を取るという選択肢も

これは一つのアドバイスですが、建設業許可の取得を検討している個人事業主の方は、「法人成り」してから許可を取得するという選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

なぜなら、発注元の元請業者からすると、同じ許可を持っている場合でも、個人事業主より法人の方が信頼性が高く見られやすい傾向があります。技術力や経験年数が同じであっても、法人の方に発注が流れるというケースも少なくありません。

せっかく費用と手間をかけて許可を取得するのであれば、将来を見据えて法人化→許可取得の流れも検討してみることをおすすめします。

4. まとめ

個人事業主の方でも、一定の要件を満たせば建設業許可を取得することは可能です。
許可取得により、元請けからの信頼性向上や高額工事の受注といった大きなメリットがある一方で、取得や更新にかかる費用や行政への報告義務といった注意点もあります。

将来的に事業拡大を視野に入れている方は、法人化を含めた長期的な計画を立てたうえで、建設業許可の取得を進めることをおすすめいたします。

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